どん底に落ちた彼女が求めたものとは

 29歳で医療関係の会社に転職すると、マーケティング部に配属。3年間働いたのちに独立。前職の会社から調査の仕事をもらいながら、医療系のネットワークビジネスに加わった。だが翌年には人間関係が嫌になってやめたという。

「このネットワークでノウハウを学んだので、海外の医療系のネットワークビジネスの日本支部を立ち上げましたが、騙されることが多くて。もうやめようと断念して、医療系のNPO法人に再就職するつもりでした。そんなとき、あるパーティーで知り合ったマネージメント会社の社長が“医療系という専門性をもった女性として発信したほうがいい”とマネージメントを申し出てくれたんです」

 40歳直前に大きなチャンスをつかんだ久美子さん。さまざまな人脈を紹介されるうちに仕事が増えていき、プロデュースする商品を販売。SNS広告の効果もあって、会社の業績がアップしたという。

「いつの間にかお金のにおいがしないものには近づかないようになりました。お金も才能もない人には近づきません。男は生きる活力ですから、常にキープしています」

 と、この15年間は男を切らしたことがない。

「でもね、去年別れた男が“君はどこかの国の人みたいだ。金の話しかしない”って。拝金主義ってことかしら」

 と口をとがらせながら、少し寂しそうだ。そんな中、思わぬ再会を果たしたという。

「25年ぶりに、私に詐欺を仕かけた男を見かけたんです。見るも無残に落ちぶれていましたよ」

 場所は吉祥寺の商店街、うらぶれた路地裏。コロナ禍での男との再会をこう振り返る。

「私が振り向くと彼も振り向いて。マスクも着用せず、くたびれたシャツとズボンでした。“こんな男のために”と、なんとも言えなかった」

 その思いは過去への遺恨なのか。それともその後の愛のない人生に対する無念なのか。久美子さん自身もわからないという。

寄稿/夏目かをる:コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマンの取材をもとに恋愛や婚活、結婚をテーマに執筆活動を。自身の難病克服後に医療ライターとしても活躍。