箱のフタに、書かれていたメッセージ

 所さんの意図がわからなかった正蔵さんでしたが、ふと桐の箱のフタの裏を見てみると、何やら文字が書かれています。

 それは、所さんから正蔵さんへ向けた、直筆のメッセージでした。そこには、こう書かれていたのです。

「伝統は壊さなければ意味がない」

 メッセージを見た瞬間、正蔵さんは、めまいがするほどの衝撃を受けたといいます。

 私は、このエピソードを、長年テレビの世界で番組制作者として活躍され、『恋のから騒ぎ』や『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』(ともに日本テレビ系)などのヒット番組を手がけた吉川圭三さんの著書で知りました。

 所ジョージさんのことをよく知る吉川さんは、このエピソードについて、およそ次のようにおっしゃっています。

所ジョージは、正蔵が林家の伝統を積み上げて芸を磨いていることも、それが大切であることも重々わかったうえで、正蔵に対して「少しは伝統を壊してもいいんじゃない? そのほうがもっと輝けるよ」というメッセージを伝えたかったのではないか?》

 所ジョージさん、かっこよすぎ! 「伝統は壊さなければ意味がない」って、名言だと思います。

 例えば、日本の伝統芸である歌舞伎の世界では近年、『ワンピース』や『風の谷のナウシカ』などのアニメ作品を歌舞伎にアレンジして上演し、好評を博しています。

 これなど、いい意味で伝統を壊している例ではないでしょうか。

 一般企業でも、老舗の会社が時代の変化に合わせて新事業に乗り出して、躍進するということがあります。

「伝統」なんて大仰なものでなくても、「ずっとこうすることが慣習になっている」「これについては、このように進めることが決まり」などということ。どこの会社にもあるのではないでしょうか。

 でも、その慣習。本当に必要なのか? そう考えると、新しい何かが見えてくるかもしれません。

 伝統は、よいところを残しつつ、積極的に壊していく。そうしてこそ、「より輝ける」のではないでしょうか?

(参考:『たけし、さんま、所の「すごい」仕事現場』吉川圭三著 小学館新書)

(文/西沢 泰生)


【著者PROFILE】
にしざわ・やすお ◎作家・ライター・出版プロデューサー。子どものころからの読書好き。『アタック25』『クイズタイムショック』などのクイズ番組に出演し優勝。『第10回アメリカ横断ウルトラクイズ』ではニューヨークまで進み準優勝を果たす。就職後は約20年間、社内報の編集を担当。その間、社長秘書も兼任。現在は作家として独立。主な著書:『壁を越えられないときに教えてくれる一流の人のすごい考え方』(アスコム)/『伝説のクイズ王も驚いた予想を超えてくる雑学の本』(三笠書房)/『コーヒーと楽しむ 心が「ホッと」温まる50の物語』(PHP文庫)ほか。

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