社会復帰が非常に難しくなるリスクも

 実際に実刑が科せられた事件も少なくない。

 大学生の男性(当時)は闇バイトに応募して強盗傷害の実行役をすることとなった。民家に押し入り、住人にケガをさせたことから、強盗傷害で逮捕。初犯だったが判決は懲役4年6か月の実刑。

 覚せい剤の運び屋をして、懲役9年の実刑判決を言い渡された例もあるという。

「この運び屋こそ軽く考えられがちですが非常に重い処罰を受けます。覚せい剤の営利目的での密輸は、運び込んだ薬物の種類や量にもよりますが、一発で実刑になるのが原則」

 高橋弁護士は「闇バイトで募集して参加したという事例ではありませんが」と前置きをしたうえで、

「私が検察官をしていた際に扱った事件です。成人して間もない若者でした。悪い友人に誘われて受け子として1回仕事をしただけ、初犯でしたが懲役1年6か月の実刑判決を受けました。特殊詐欺は社会問題化し、裁判でもかなり厳しく処罰される傾向があります。

 そもそも、確実に執行猶予がつくような軽微な犯罪であれば、犯罪の首謀者たちの仲間内でやるはずですよね。そうではなく、それなりの対価を払い、SNSで人を集めるという手間とリスクを背負ってまで共犯者を募っているのは、警察に逮捕されるリスクや逮捕されたあとの代償が大きいからでしょう」

 未成年が逮捕された場合はどうなるのだろうか。

「少年法の適用で、成人とは手続きが異なります」

 少年院送致ということになれば、少年院に収容される。また、重大犯罪に関しては、成人と同じ刑事裁判を受け、刑務所に収監される場合も。

「つまり、未成年であっても、犯した犯罪の内容によっては重い懲役刑や身柄拘束を受ける可能性があるということです」

 刑事処罰とは別に、学校を退学処分になってしまったり、会社を解雇されることもある。家庭があるなら、子どもや配偶者の未来にまで影響を及ぼすような社会的制裁も免れない。

 それに刑事責任を果たしたらそれで終わり、というわけにはいかない現状もある。

「ネット上に事件内容を投稿する人もいるため、半永久的に氏名や顔写真などの情報が残ってしまうおそれがあり、社会復帰が非常に難しくなる。それほどのリスクまで背負っているということです」

 アルバイトや副業という軽いノリで犯罪に手を染めてしまったら取り返しがつかない。

子どもたちをどう守ったらいいのか

 では、高校生や大学生の子どもたちをどう守ったらいいのだろうか。高橋弁護士は、

「親世代が実際に闇バイトはどういう言葉で募集されているのか実態をその目で確認することが重要です。当然“強盗の仲間を集めています”というような直接的なアナウンスはしていません。さまざまな隠語やキーワードを駆使しているんです。まずそこを知ることです」

 例えば仕事内容によって強盗は『叩き』、違法薬物の運搬は『運び』などの隠語が使われている。ほかにも『単発の仕事』『保証金なし』も闇バイトを募集する際のキーワードだという。

一見まともそうに見える闇バイト募集の投稿を自分で確認したあとに、お子さんに見せて“これ、何だと思う?”という会話から始めてみてください。そこから、実は自分も危ない世界と隣り合わせのところにいるんだ、という危機感を伝えるきっかけにしてほしい。親子で危機感を共有することが子どもが闇バイトに陥ることを未然に防ぐ第一歩だと思います」

 もしあなたの子や孫が闇バイトに手を染めていたら……。それがわかったとき、どうしたらいいのだろうか。

「警察に行くという踏ん切りがつかない、そもそも犯罪かどうかもわからない場合もあると思います。まずは弁護士に相談してください。状況に応じて自首のサポートもできます。弁護士が独断で、勝手に警察に通報することもありません。安心して、速やかに行動してほしいです」

 闇バイトは、甘い誘い文句のもと、SNS上で手軽に参加できてしまうものだが、1度手を染めてしまったが最後、支払う代償はもらう報酬よりもずっと高いものになる。