以前のお墓のイメージと異なり、樹木をモチーフにした樹木葬や、明るい印象の納骨堂など多様化している
以前のお墓のイメージと異なり、樹木をモチーフにした樹木葬や、明るい印象の納骨堂など多様化している
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専門家が教える「墓じまい」

 家族の合意ができたら、次は改葬元のお寺や霊園への相談となる。特に離檀料や永代使用料の返金などお金の問題はトラブルになりやすい。

お寺としても、いまの檀家という仕組みがあって成り立っているところがあるので、事前にしっかりと相談しておくことは必須です

 離檀に際して包む金額については、その家とお寺の関係性や気持ちの問題でもあり、宗派や地域によっても異なるので、一概にいくらが適正とは言えないのが難しいところです。3万円から20万円といったあたりで、これまでの法要1回分のお布施を目安に考えるといいかと思います」(佐藤さん)

 改葬先を考えるうえでは、別の場所の一般墓以外に、永代供養墓という選択肢がある。「永代供養墓はお寺や霊園が、承継者に代わってお墓を管理・供養してくれるお墓のことで、樹木葬や納骨堂などさまざまな種類があります。選ぶポイントとしては、お墓の種類、自宅からのアクセス、金額の3本柱を総合的に考える人が多いです」(古屋さん)

「永代」とは言うものの、供養してもらえる年数は霊園やお寺ごとに細かく決まっている場合がほとんどで、年数によって金額も異なる。共同のお墓に埋葬する合祀墓という選択もあるがその場合に、納骨後は遺骨を取り出すことはできない。そのほか、散骨や、自宅などに遺骨の一部を保管して供養する手元供養を選ぶ人もいる。

 改葬先が決まれば、あとは段取りに沿ってスムーズに進めればいいだろう。

「改葬に必要な書類などは、墓石の撤去などを行う石材店などでも詳しく教えてもらえます。墓石の撤去代や遺骨の取り出しにかかる費用などはお墓の面積やサイズ、納骨されている柱数によっても異なるので、事前にしっかりと見積もりを出してもらうと安心です」(佐藤さん)

 お墓の在り方も時代とともに変わりつつある。墓じまいも、そのなかの新しい選択肢のひとつなのかもしれない。

「ご先祖様を敬う気持ちは変わらなくても、家族にとって理想のお墓のカタチはそれぞれです。いちばんよい選択を考えてもらえるといいなと思います」(古屋さん)

■■■墓じまいの段取り■■■(※は仏教の場合)
【1】改葬元に改葬の意思を伝える
【2】改葬先の墓地を確保する
【3】「埋葬(納骨)証明書」、「改葬許可証」の申請・発行
【4】改葬先への埋葬申請を行う
【5】閉眼供養(お魂抜き)を行う
【6】墓石を撤去する
【7】改葬先に納骨する
【8】開眼供養(お魂入れ)を行う

お話を伺ったのは……●株式会社鎌倉新書/広報・古屋真音さん、お客様相談センター・佐藤信也さん●供養や相続に関わるポータルサイトの運営や、情報サービスを提供する企業。日本最大級のお墓情報サイト『いいお墓』では、全国の霊園・墓地情報の検索や資料請求も可能。『いいお墓』https://www.e-ohaka.com/

(取材・文/吉信武)