女優・冨士眞奈美が語る、古今東西つれづれ話。今回は、『ぴったんこカン・カン』でたびたび共演したTBSの安住紳一郎アナウンサーについて。

 先日、娘の(岩崎)リズとともに『徹子の部屋』に出演した。もう何度、徹子さんの部屋を訪れたか忘れちゃったくらい呼んでいただいている。だけど、徹子さんとお話しするのはいつも楽しくって。

 私は、どういうわけか骨折で入院することが多い。2020年の11月にも、胸椎を骨折して全治3か月を言い渡されてしまった。若いころは、これからロケでスキーをするシーンを撮るというのに、出発の上野駅の階段で転んで手を骨折したり、いろいろ迷惑をかけたなぁ。

 あるときは、骨折が治り私が退院というときに、あろうことか娘のリズが車にはねられ救急車で担ぎ込まれるなんてこともあった……。なんであなたまでお世話になるのよ!しかも、私を救急搬送してくださった救急隊員さんまで一緒!秋山隊員には、本当に親子ともどもお世話になりました。この場を借りて、お礼申し上げます。

 このお話は、TBSアナウンサーの安住(紳一郎)さんも気に入ってくれて、幾度となく聞いてくださった。安住さんはとても聞き上手の名司会者だと思っている。

いちばんの長所は、清潔感

 私と和子っぺ(吉行和子)がお世話になった、彼が司会を務める『ぴったんこカン・カン』が、9月をもって終了すると聞いて、とても残念。

 なんでも安住さんが、朝の帯番組の司会を担当するため番組は終了する─らしいけど、彼の司会力を考えれば納得。今まで多彩な司会者たちと出会ってきたけど、安住さんはとても才知に長けた人だと思う。それに、毎朝お目にかかれるのはうれしい。

 彼は、北海道十勝地方の芽室という田舎で育っているからか、まとっている雰囲気がとても心地よい。お姉さんはチアリーディング元日本代表で、地元でも有名な秀才だったそう。「自分の分を含めすべて才能を持っていってしまったと思った」なんて話してらしたけど、あなたも十分、才能にあふれたお人ですよ。

 最初に安住さんのことを知ったのは、明石家さんまさんの番組か何かで千鳥足のサラリーマンから軽妙洒脱に話を聞き出す姿だった。実際にお会いすると、やっぱり話を聞き出すのがとても上手。仕切る力も申し分なくて、途中で話を区切るにしても相手を不快にさせずに、その場を丸く収めてしまう。そして、何事もなかったかのように次の話を展開する。

『ぴったんこカン・カン』で一緒にロケをしていて驚いたのは、カメラが回っていないタイミングで、次の構成や展開を教えてくれること。進行を先へ先へと想定し、私たちにわかりやすく伝えてくれる。アナウンサーであると同時にプロデューサーでありディレクターでもある。だから現場がスムーズに進行する。

 おまけに、いちばんの長所は、安住さんには清潔感がある。毒を吐くにしても外見的にも内面的にもまったく嫌みがないから耳を傾けてしまう。話を簡潔にまとめられる。それって大事な生命線なのよね。

 人気があって独立するアナウンサーが多い中、安住さんは欲がないからなのか、変わらない。人前でしゃべる仕事の人って、自分が前に出たりしようとする言動が多い。

 ところが、彼は前に出ようとせずに、周りの様子をきちんと考えて差配をする。そんな心構えが、彼のバリトンボイスに表れていると思う。私のように片方の耳の調子がよくない人間でも、彼の声はすべて聞き取れる。あの声のトーンが、人柄そのもの。心地よいのよ。バランス感覚がいいのよね。

 そんな安住さんだけど、自分がいちばん大切、いちばんかわいいと言ってはばからない。ほんと、面白い人(笑)。また、どこかでご一緒できる日を楽しみにしている。その際もまだ独身だったら、和子っぺ喜ぶだろうな。なにせ、安住さんは私たちのアイドルだから。

冨士眞奈美
冨士眞奈美 ●ふじ・まなみ 静岡県生まれ。県立三島北高校卒。1956年NHKテレビドラマ『この瞳』で主演デビュー。1957年にはNHKの専属第1号に。俳優座付属養成所卒。俳人、作家としても知られ、句集をはじめ著書多数。

〈構成/我妻弘崇〉