遺伝子組み換え食品との違いは?

 このゲノム編集食品ですが、これまでの遺伝子組み換え食品に比べて、どのような違いがあるのでしょうか。

 遺伝子組み換え技術は、ほかの生物の遺伝子を挿入することで行う生命の改造です。例えば、成長が早く大きくなるを開発するためには、大きくなるの成長ホルモンをつくる遺伝子を挿入して開発してきました。

 一方、ゲノム編集技術は、標的とする遺伝子を壊す技術です。ゲノム編集の場合、成長を抑制している遺伝子を壊すことで、大きくて肉厚のを誕生させています。

新たな発がん物質が生まれたケースも

 ゲノム編集技術では、このように遺伝子を壊すことで特定の栄養分を増やしたり、成長を早めたりでき、さまざまな作物や動物で開発が進められています。

 しかし遺伝子はとても大切な命の情報です。壊してよい遺伝子はなく、壊すことで意図的に障害や病気をもたらします。また、遺伝子を壊すことで思いがけない毒性を持ったり、アレルギーを生じさせたりする危険性がありますが、このような毒性を評価する研究はこれまでに行われていません。

 さらに問題になっているのが、『オフターゲット』と呼ばれる標的以外の遺伝子を壊す現象が起きてしまうことです。この場合、どのような影響が出るかわかりません。これは食品の安全性にとって大変な脅威です。

安全性の検証が不十分とゲノム編集食品に反対する人たちは少なくない
安全性の検証が不十分とゲノム編集食品に反対する人たちは少なくない
【写真】ゲノム編集により肉厚になった養殖マダイ

 未知のリスクを考えるうえで参考になるのが、ゲノム編集技術と同じく遺伝子を切断する『RNA干渉法』を用いたジャガイモの例です。

 この技術は発がん物質や変色を抑制する目的で開発されましたが、結果的に、予想外の発がん物質が生まれたことが開発者の内部告発によって明らかにされています。

 ゲノム編集食品は、遺伝子組み換え食品のように環境影響評価を行う必要がなく、食品としての安全性の確認も、また表示も必要ありません。届け出も任意であるため、開発されればすぐに栽培や流通が可能になります。

 今回のトマトやマダイは、開発企業が届け出を行い、表示もするようですが、基本的にはそれをしなくてもよい仕組みになっているのです。