鏡で乳房もセルフチェック

 乳がんは内臓にできるがんと違い、自分で見たり触ったりして気づくことができる数少ないがんのひとつだ。

乳がんと診断された人の約半数は、何らかの自覚症状があったとの報告もあります」

 と話すのは、いながき乳腺クリニック院長の稲垣麻美先生だ。

 そこで近年、早期発見のために世界的に提唱されているのが「ブレスト・アウェアネス」という新たなキーワード。ブレスト=乳房、アウェアネス=意識するを意味し、「自分の乳房に関心を持ち意識して生活すること」を指す

「定期的な検査に加えて、日々のセルフチェックを習慣にすれば早期発見の可能性は高くなるでしょう。毎日顔を鏡に映し、肌を触ってお化粧のりを確かめるように、乳房も毎日見て触ってほしいです。しこりやひきつれ、乳頭からの分泌物など、いつもはない変化があったら、検診の機会を待たずにすぐ受診を」(稲垣先生、以下同)

 受診する際は病院の乳腺外科や乳腺クリニックなど、乳腺外科医のいる医療機関へ。

「ブレスト・アウェアネス」で乳がんから命を守る!

【1】日々のセルフチェック

 ●乳房をよく見る
 入浴前に鏡の前で乳房をよく見る。その際、眼鏡やコンタクトをしている人ははずさずに。

 ●触って確認する
 入浴中に身体を洗いながらせっけんのついた手で、指をそろえて鎖骨から乳房、わきの下までくまなく触る。手を上げるとしこりを見つけやすい。

【2】乳房に下のような変化がないか確認

 ●しこり
 ●乳頭からの分泌物
 ●皮膚のへこみ、ひきつれなど
 ●左右で大きさや形が違う

【3】変化に気づいたら、すぐ医療機関を受診

【4】定期的に乳がん検診を受診する

 40歳以上の女性を対象に2年に1度実施。身内に乳がん経験者がいたり、肥満、高血糖などハイリスクの人は、自分に合った検診方法やスケジュールを医師に相談するのもおすすめ。

2年に1度の検診は必ず受けて

 乳がんにはセルフチェックでは気づきにくい、奥のほうにしこりができるタイプや、しこりをつくらないタイプもある。その発見に有効とされているのが乳がん検診だ。

「日本では40歳以上の女性を対象に、2年に1度のマンモグラフィが死亡率を下げる科学的根拠のある方法として推奨されていて、各自治体で無料または安価で受けられます」

 この2年に1度のマンモグラフィは命を守る最低限の検診内容だと稲垣先生は言う。

「患者さんの中には、数年前に1度検診を受けて大丈夫だったから自分はもうがんにならないと安心してしまい、それきりという人も。それでは早期発見できず手遅れになりかねません」

 特に、肥満、高血糖、飲酒習慣や喫煙、身内に乳がんや卵巣がんにかかった人がいる場合は発症リスクを上げる。セルフチェックはより慎重に行い、検診も自分に合った検診内容や頻度を医師に相談することが大切だと稲垣先生は強調する。

 また、コロナ禍による受診控えが乳がんに限らず問題になっており、日本対がん協会によれば令和2年はがん検診を受けた人数が前年度と比べて約30%減と大きく落ち込んだ。

乳がん検診も昨年最初の緊急事態宣言のときには一時中止しましたが、現在は再開しています。互いにマスクをしたまま診療可能な部位なので、コロナ禍だからと遠慮せず、検診をきちんと受けてほしいし、気になることがあれば、怖がらずに受診してください」