「ほかにも、医師や看護師がつけた防護具を見て泣き出したり、悪気はないんですけれど、防護具をはぎ取ろうとしたり。年齢的にマスクも着けられない子も多くて、そういう面では医療スタッフの負担は決して軽くはなかったと思います。これは小児病院ならではの問題ですが、今後の課題の1つといえるでしょう」

 症状が軽い割に入院期間が8日間と長めなのも、今回の調査でわかったことだ。

「これは、新型コロナは“発症してから10日間、かつ症状がなくなっている”ことが退院の条件だったことから、この基準を満たすまで退院できない子どもが多くいた、ということだと思われます」

 退院の調整は基本的に保健所が担っている。庄司さんによると、同院のスタッフが管轄の保健所に連絡して、「この子は(退院できますが)、帰れますか?」と聞くと、「まだ親御さんが入院しているので、もう少し(入院を)お願いします」と言われることもたびたびあり、結果的に入院の長期化につながったという。

基礎疾患のある子どもはどうなのか

 ところで、大人では基礎疾患のある人のほうが重症化しやすいとされているが、子どもではどうなのだろうか。

「われわれの調査の結果、基礎疾患がある子どものほうが若干、症状が出やすい傾向がありました。症状があった子どもの基礎疾患で最も多かったのは気管支ぜんそくで、次が肥満、3番目が先天性の心臓病でした」と庄司さん。重症化との関連については、基礎疾患がある子が少なかったことと、重症化した子どもがほとんどいなかったことから、十分検討できなかったという。

 感染経路については、感染経路が推定できた対象者のうち、79%が家庭内感染、15%が幼稚園や学校などの教育関連施設による感染と考えられた。

「家庭内感染の多くは、保護者が外から持ち込んだウイルスを家庭内で広めることで起こります。12歳未満のお子さんは現時点ではワクチンを打てないので、まずは大人がしっかり感染対策をすることが大事です。できればワクチンを接種していただき、今のような感染者が少ない時期でも、基本的な感染対策であるマスクをするとか、手指を洗うとか、ソーシャルディスタンスをとるとかは、必要でしょう」

 万が一、家庭内で感染者が出たときの対策に関しては、国立成育医療研究センターが、東京都が公表している「自宅療養者向けハンドブック」を、子どもがいる家庭向けにアレンジし、ホームページ(https://www.ncchd.go.jp/news/2021/210817.html)で紹介している。

 とはいえ、小さい子どもがいる家庭では、こういった対策が十分にとれないこともある。「対策を100%守ることは現実的には難しい。できる範囲でやっていきましょう」と庄司さんはアドバイスする。