後藤さんの母親は2010年1月、息子が服役している最中に他界した。母の願いは、そのまま彼の心残りとなったのだ。

「出所してから自分でクリニックに聞いたり、あとは姉に相談したりしながら除去にかかる費用を調べました。そのときに伺った料金は60万円強くらいの額で、『少しずつ貯めていかなきゃいけないな』と思いつつ、もう一方で『本当に消すべきなのか?』という葛藤もありました。

 僕自身、SNS活動をしていく中で首の刺青が一種のトレードマークになっている面もあるし、単純に好きで入れたものでもあったので。でも、最終的には母との約束を大切にしたいと思い、決心しました。姉は刺青否定派の人なので、今回の除去手術を伝えると『いいね!』と大賛成でした」(後藤さん)

「彫るよりも、消すほうが痛い」

 今回は首の鯉と両手の指(計4本)の付け根にあるタトゥーを2か月おき、計5回(10か月)の施術で消していく予定だ。除去方法は色素(墨)を粉砕し、体外に排出する「ピコレーザー」。首は1回の施術において当てるレーザーは約4000発にのぼる。

 初回の除去手術は昨年11月末にすでに行われ、そのときの様子は朝倉未来YouTubeチャンネルで公開された。手術直後は照射した箇所がやけどし、水ぶくれのような状態になっていたが……。

「彫るより消すほうが痛いですね。レーザーの1発1発は跳ねた天ぷら油が一斉に皮膚に当たったような感覚で、首よりも皮膚に骨が近くて脂肪が少ない敏感な指のほうが痛かったです。僕は彫り師さんから『痛みに強いね』と言われるほうなんですが、麻酔をしていなかったら施術中に気を失っていたかもしれません(笑)」(後藤さん)

 この痛みは手術した後も半日ほど尾を引いた。その後、アイシングしながらケアを続け、ひと晩寝ると翌日には痛みは引いていたそうだ。後藤さんの施術を担当している東京イセアクリニックの酒井新介先生にも話をうかがった。

「後藤さんの首の鯉の場合は、皮膚を切って縫う『切除術』と『レーザー治療』の2つの選択肢がありました。鯉の面積が結構広かったので、前者の場合は施術を3~4回に分けて行う必要があります。そうすると終わるまでに2年ぐらいを要し、傷も残ってしまいます。

 一方、レーザーで色素を破壊するとその部分は白抜けし、それはそれで元から何も入れていなかった肌のようには戻りません。どの施術を選択するかは、状態を診た上でご本人と相談し判断していきます」(酒井先生)