毎年恒例の「春の全国交通安全運動」週間は4月15日まで。交通事故ゼロを目指して、さまざまな動画が公開されている。ドライブレコーダーの普及により、事故の瞬間を捉えた動画が目立つなか、遺族や加害者のセリフで構成するものも。免許更新で見るものとはひと味違うオリジナル動画とは―。

 「春の全国交通安全運動」週間が今年も始まった。アイドルグループ・ももいろクローバーZの佐々木彩夏さんやM-1ファイナリストのインディアンスなどの芸能人も各イベントに参加し、交通ルールの順守を呼びかけている。

 国内の交通事故死亡者数のピークは1970年の1万6765人。そこからは緩やかに減少したものの、1992年には2回目の山を迎え、1万1452人の“交通戦争”の犠牲者が出ている。

「2016年以降は交通事故の発生件数・死亡者数ともに年々減っていて、5年連続で過去最少を更新しています。

 生活者の交通安全意識が向上したことはもちろんですが、車自体の安全性能が日々進化していることも事故減少の一因といえますね。ただし、件数こそ減ってはいますが、やはり毎年悲惨な事故は起きており、特に死亡事故については若年層よりも高齢者が引き起こす件数が多くなっています。事故死亡者数ゼロを達成するまでは、引き続き交通安全の啓発が不可欠です」

 そう語るのは、交通安全フォーラムのパネリストも務める、自動車ジャーナリストの川端由美さん。近年は動画による交通安全意識の普及効果にも注目しているという。

「ここ数年は特に、ドライブレコーダーの普及によって、事故発生現場のリアルな動画がSNSなどに上がるようになりました。横断歩道上で歩行者が通り過ぎたと思って車を発進させたところ、急にUターンして戻ってきた歩行者を避けられず衝突してしまう動画など、さまざまな原因で事故が起こることがわかります。

 
ショッキングな映像ではありますが、加害者側の視点を疑似体験することで、事故の恐ろしさや交通マナーの大切さを再認識させられます」(川端さん、以下同)

交通事故発生件数と死亡者数の変移

交通安全に注目してほしい

 危険運転に遭遇したドライバーがYouTubeなどに投稿した“ヒヤリハット系動画”もネット上やニュース番組で度々話題に上がるようになった。近年問題視されているあおり運転の一部始終や、歩行者の急な飛び出しなど、あわや重大事故につながるシーンを切り取ったそれらの動画からは学ぶことも多い。

「普段運転をしない人にとっても“車にはこんなに死角があるんだ”といった発見がありますね。特にトラックや大型自動車視点の動画では、死角に入った歩行者や自転車がいかに見えていないかということもわかります。こういった動画から目を背けず、交通安全の意識が広く定着するといいなと思います」

 衝撃映像系の動画が数多く存在するなか、遺族の声をドラマ仕立てに再現したり、キャッチーなコピーと映像で交通安全を促すクリエイティブ系動画の力も大きい。特に近年、インパクトのある交通安全啓発動画を発信し続けているのが、自動車ディーラーである岡山トヨペットだ。

「車を販売する当社にとって、交通安全は決して無関係ではありません。安心安全な街づくりのために、まずは交通安全について知ってもらうことが重要だと考え、創立60周年にあたる2016年から交通事故ZEROプロジェクトの一環として、動画の制作を始めました。今年も第9弾となる新作動画を4月6日から公開しているので、ぜひご覧いただければと思います」

 そう教えてくれたのは、岡山トヨペットの営業部・総合企画室の川北秀明さん。最新動画『止まろう岡山』は、自動車教習所でのマラソン大会が舞台だ。各県名を想起させるゼッケンをつけたランナーが一斉に走り出し、レースは徐々にヒートアップ。しかし、ゴール手前には信号のない横断歩道があり、いまにも渡ろうとする少女の姿が……

 多くの選手が足を止めるなかで「岡山」と書かれたゼッケンの選手だけが独走。周囲の人々に白い目で見られていることにも気づかずに、ひとり笑顔でゴールテープを切る。

「JAFにより行われた2021年の調査で、岡山県は信号機のない横断歩道での一時停止率がワーストワン。まずはその事実を知ってもらうため、制作会社との打ち合わせを重ねてこういった動画が生まれました」(川北さん)

 岡山トヨペットは、過去にも岡山県の交通事情を取り入れた動画をたくさん発信しており、ウェブサイトやYouTubeチャンネル「Toyopet Okayama」でも見ることができる。

 忍者をモチーフに日本の交通環境のシビアさを訴えた『Road to Ninja―一億総忍者の国―』や、スマホのながら運転防止を訴える『2seconds』など、ユニークな視点で作られた動画は多くの人に視聴されている。

「県内に向けた動画ではありますが、これまでたくさんの方の目に留まり、国内の広告賞などをいただいたこともあります。国内のみならず、世界中の方にも気軽に見ていただけて、さらには時を経て未来のドライバーにも届く動画というコンテンツの力を実感しています」(川北さん)