最後に、悪質宇宙人メフィラス(星人)が登場するのが第33話「禁じられた言葉」だ。

「ザラブ星人の侵略法をさらに推し進めたというか、自ら選んだ地球人の子供に、『地球をあげます』と契約を迫ることで挑戦してくる宇宙人でした。先に登場したザラブ星人や、バルタン星人、ケムール人を手下のような存在として登場させることでその力をアピールもしました。ウルトラマンとも互角の勝負を繰り広げますが、その途中で『宇宙人どうしが戦っても仕方がない』と言い、停戦するなど紳士的な一面も見せました。『シン・ウルトラマン』ではその人間体として山本耕史が登場し、『メフィラス』と書かれた名刺を差し出す場面がありましたが、どのような心理戦を繰り出してくるのか、その戦略がどうリアルにアップデートされているのか、初代と比べてみると、ますます楽しめるはずです」

『8日で死んだ怪獣の12日の物語』にも注目

 そして注目したいのが、本作のポスタービジュアルなどに記載された「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」というコピーだ。

「これは初代ウルトラマン最終回『さらばウルトラマン』で、宇宙恐竜ゼットンに敗れ、故郷である光の国からその生命を助けるために現れたゾフィーの言葉です。ゾフィーはウルトラマンを甦らせようとしますが、ウルトラマンは人間体であるハヤタ隊員のほうを生き返らせてほしいと願います。そのときのゾフィーの驚き。その言葉が選ばれていることから、ゾフィーやゼットンは登場するのか、そしてこのようなやりとりが存在するのか、または全く別の形で交わされるやりとりなのか。その比較のためにもぜひ押さえてもらいたいですね」

 初代のウルトラマンで押さえておくとより楽しめそうなのはこれらだが、全く別の作品も、合わせて見るといいかもしれないと、前出の映画ライターは言う。

「2020年に発表された、岩井俊二監督の『8日で死んだ怪獣の12日の物語』です。コロナ禍の真っ只中にリモート等を駆使して制作された作品で、コロナと戦ってくれるという怪獣を通販で購入し育てていくといったものなのですが、作中にはいわゆるスーツ等での怪獣はいっさい登場しません。

 監督は岩井俊二さんですが、主演が『シン・ウルトラマン』と同じく斎藤工で、斎藤工が育てる怪獣についての知識をいろいろたずねる相手が樋口監督という、『シン』つながりなのが、興味深いです。ふたりのやりとりを見ながら、『シン・ウルトラマン』撮影中の雰囲気を妄想したりするのも面白いのではないでしょうか

 公開された後は、『シン・ゴジ』や『シン・エヴァ』のような新たな衝撃が目白押しであることは間違いないが、これらをサブテキスト的により深く「シン」の世界を楽しんでみたい。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉