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ー 香川とTBSの誤算

 すさまじい情報決壊もそろそろおしまい、悪情報はもう出てこない。関係者ならそう思い込みたいところだろう。

 俳優の香川照之(56)が3年前に起こした性加害。

 騒動が鎮火しない背景には、香川の行為自体のわいせつ性に加え、香川側の甘い認識、香川側&TBS(司会を務めていた情報番組『THE TIME,』)の読みの浅さ、香川側&テレビ朝日(放送中の出演ドラマ『六本木クラス』)のしがらみが、香川側の判断を悪化させた側面が浮上してきた。

香川とTBSの誤算

 8月25日に発売された週刊新潮が、香川の性加害を第一報した。

「メディアに見本刷りが届いたのが24日昼ごろ。ただ香川側は、週刊新潮の問い合わせがあったため掲載されることを承知し、『THE TIME,』の金曜MCとして出演している関係で、事前にTBSに連絡を入れていたようです」

 とスポーツ紙記者。ところが香川側は、ことの重大性を慎重に理解していないかったと、前出・スポーツ紙記者が続ける。

「3年前の出来事であること、女性と和解できていたこと、その後も店との関係は良好だったことなどから、騒動の広がりを正確に認識できなかったようです。実際、『THE TIME,』で謝罪した香川の言葉に、降板をにおわせるものは皆無でした」

 同番組で香川は謝罪を反省の言葉を伝え、こう表明したのである。

自戒の念をきっちりと持って、改めてまた日々を務めていきたいと思っています》

《与えていただける仕事に対しましては、しっかりと真摯に真面目に一生懸命全力で、これまでどおり挑んでいきたいと思っています》

 辞める気などさらさらない、今思えば厚顔な“続投宣言”だった。

 前出・スポーツ紙記者が取材で耳にした情報を加える。

TBSも、香川の謝罪で乗りきれると踏んでいたようです。世論を読み間違えた、という内部の声を聞きました。新潮社に、次週以降の追加報道があるのか、それさえもきちんと情報収集できていなかった。報道機関としては甘い対応ですが、TBSがブレークさせた香川というブランドを、番組降板で傷つけることはできなかった。そのあたりのジレンマが、香川側&TBSを誤算させたと思いますよ」

 謝罪の翌週「デイリー新潮」が、香川が悪相で店のママの髪の毛をつかむ証拠写真を掲載し、「文春オンライン」がTBSドラマの懇親会で女性スタッフに暴力をふるった疑惑を報じ、万事休す。

 香川をCM起用していたナショナルクライアント、トヨタが三下り半を突き付けたこともあり、TBSは9月1日、香川の番組降板を発表した。その後、雪崩を打ったように、CM降板が相次ぎ、番組降板も発表されたのだが……。

「通常であれば、香川側は“活動自粛”や“芸能活動休止”の発表をするところです。実質的には、そんな感じですからね。ところが今回、まだその発表がない。いや、できないのです」

 情報番組デスクはそう指摘する。その理由を次のように読み解く。

「ここでカギになるのは、テレビ朝日で放送中のドラマ『六本木クラス』(木曜午後9時)。香川が主要キャストとして出演しています。予定では全13話ですので、放送は今月いっぱいは続きます。テレ朝は、TBSが情報番組のMC降板を発表した1日に、香川の継続出演を発表しました。今さら香川の代役もないでしょうから、判断が妥当かどうかは別にして、続投の判断しかないのかなとは思いますね。

 ただ、このドラマの収録と放送があるため、香川側は“活動自粛”“活動休止”を発表できないわけです」

 危機管理に『もし』はないが、第一報直後に“降板”“活動自粛”を決断していたら、世間の風向きもまた違ったものになっていたのかもしれない。

 香川側は状況を見誤った。今年の秋風は、さぞ冷たいことだろう。

〈取材・文/薮入うらら〉