子どものころは貧しくて学校に通えない時期も

梅沢 先生はインドとの交流が深いと思いますが、先日ロケでインドの人が多く住む東京の西葛西に行ったんです。

 子どもたちがいっぱい遊んでるなかに、両手に赤ちゃんを抱いてるお母さんがいたんで「双子ですか」と声をかけたら「私の子と隣の家の子よ。隣の人は仕事中だから私が預っているの」って。まさに遠くの親戚より近くの他人。手があいてる人が子どもの世話をしているんですよ。

ヨグマタ インドのヒンドゥー教に「神様に見えないところから守られている。だから悪いことはしない」という教えがあるので、お互いに安心して助け合っているんです。

対談中の相川圭子(撮影/矢島泰輔)
対談中の相川圭子(撮影/矢島泰輔)
【写真】梅沢富美男が使いわけている2種類の補聴器

梅沢 ふと子どものころを思い出しました。私は福島の生まれなんですが、ものすごく貧乏で学校にも行けない時期があったんです。

 お腹がすいてヘトヘトになっていると、近所のおばちゃんが「こっちおいで」っておにぎりくれたり、農家のお父さんがお芋くれたり。インドの人たちの暮らしを見て、かつて日本の助け合いの暮らしは、いい習わしだったんだなって感動しました。

ヨグマタ そうですか。今の日本は殺伐としていますからね。梅沢さんに助け合いの尊さを皆さんに伝えてほしいです。

 カルマといって因果応報の考えがあるんですが、親切な行為は親切で返ってきます。慈愛でよい行為をすれば必ず花開きますのでね。無償の愛でぜひお願いします。

僕らの世代、本当はもっと甘えたいはず

梅沢 いやあ先生のように尊敬できる人の話は素直に聞けるんですけど、いつもは「おまえに言われたかねえんだよ」って思っちゃって(笑)。僕らの世代って、若くて元気なんですよね。昔は還暦過ぎたら、すっかり老人でお爺さんでしたよね。「大丈夫? おじいちゃん」って優しくされて。でも今は70過ぎても元気だから「このジジイ!」なんて思われて(笑)。でも本当はね、僕らの世代って優しくされたいんですよ。

ヨグマタ 座長で頑張っていても素の自分は寂しいのですね。だから甘えたい。お母さんのように包まれたいんですよね。

梅沢 そう! 甘えたい。その感覚がピッタリです(笑)。

ヨグマタ 瞑想するということは、まさに母親に包まれているような平和な感覚なんです。私たちは幸せを求めて生きていますよね。ただし欲望を満たすだけでは、一時的で表面的な心の満足だけで、深いところは常に不安で寂しいのです。ぜひ瞑想することをおすすめします。深い瞑想に入ると愛に満ちて豊かになりますから。

梅沢 いやあ、まだまだ修行だなって思います。

ヨグマタ ぜひ悟りを目指してください。芸能界の聖者になって慈愛の活動で日本をよくしていただきたいです。

梅沢 聖者、自分の生き方とはいちばんかけ離れているようにも思いますが(笑)、目指してみようと思います。

相川圭子(あいかわ・けいこ)●1945年生まれ。山梨県甲州市出身。女性で史上初めて「究極のサマディ(解脱・涅槃)」に達した、現在世界で会えるたった2人のヒマラヤ大聖者のひとり。宗教の源流である深い瞑想と教えで最高の人間完成に導くヒマラヤ秘教の正統な継承者。2016年以降、国連の平和のイベントで主賓スピーチを行う。著書に『慈愛に生きる ヒマラヤ大聖者 相川圭子自伝』(中央公論新社)など。

梅沢富美男(うめざわ・とみお)●1950年生まれ。福島県福島市出身。「梅沢富美男劇団」座長。1歳7か月で初舞台を踏み、15歳から本格的に舞台に立つ。その後、20代半ばで舞踊ショーの女形が話題となり、一躍大衆演劇界のスターに。舞台では二枚目から三枚目、艶やかな女形まで幅広い役をこなし、脚本・演出・振り付けも手がける。そのほか、テレビドラマや映画などにも俳優として多数出演。

〈構成/浦上 優〉