借金を返しつつ、倉庫から「ボロアパート」(花蜜氏の弁)に移り住んだころ、さらなる悲劇が襲う。ある日の早朝、アパートを訪れる者の姿が。それはある意味では闇金より怖い存在かもしれない“国”という組織。金融庁管轄の証券取引等監視委員会が“金融商品取引法違反・相場操縦の疑い”による家宅捜索で自宅になだれ込んできたのだ。

「自分は会社を守るために株を買っていたわけですが、すごい勢いで買っていたので、証券会社からは確かに注意を受けていました。国からも厳重注意かなと思っていたのですが、その日“花蜜さんには近い将来、刑事罰を受けてもらいます”と言われました。逮捕・起訴・裁判が待っていることを予告されたわけです」

 その後、花蜜氏は取り調べのため、1年2か月、金融庁に通った。その間も債権者による取り立ては当然続いた。疲弊する日々。結果的に逮捕は免れたが在宅起訴に。その裁判結果が冒頭だ。

「執行猶予がようやくこの間終わったんですよ(笑)」

 言い渡された罰金はクラウドファンディングで集めた。追徴金は分割で支払っている。返済額については高等検察庁は、なんと“月1万円”と認めた。

「1077年ローンで払っています(笑)。あと残りのローンは1073年ですね」

『ペットの里で』犬猫の保護活動

『課長島耕作』のようなビジネスの争いと『闇金ウシジマくん』のような取り立て。波乱万丈すぎる人生だが、花蜜氏は諦めずに上を向いている。今、取り組んでいるのが犬猫の保護活動だ。岩手県滝沢市にある『ペットの里』は、東京ドーム約9個分もの広大な敷地の保護施設だ。“2つの事件”が起こる以前より花蜜氏は取り組んでいる。やるからには“世界最大級”の保護施設にこだわった。ドッグランや保護猫カフェなど行楽客が楽しめる施設もある。

「施設の代表はかつて出前館に所属していて私をサポートしてくれていた女性です。10万匹を超える殺処分を無くすことを目標に掲げています。そんなこと無理だと思っていたのですが、それでもやりたいと言うので“夢”に乗りました。事件前だったので、“金なんていくらでも稼げる”と本当にうぬぼれていたんです(笑)。それで2億円ほどつぎ込みました」

 事件を経た現在は岩手県に移住し、自ら重機を扱い、『ペットの里』を運営している。花蜜氏は「殺処分は瞬時にゼロにできる」と豪語する。日本では現在、犬4059頭、猫1万9705頭が殺処分されている('20年度)が……。

「保護犬猫が生涯生きていくための保険を作りました。飼い主さんに万が一のことが起きたときに、ペットが保健所に持ち込まれて殺処分されないように、ペットが生涯生きていくために必要なお金を遺して、信頼できる人や組織に託すことができるというものです。病気になったときに支払われる保険はありましたが、こういった保険はなかったので、保険会社さんに掛け合って作ってもらいました」