目次
Page 1
ー 自らを実験台に「最後まで普通の生き方」を模索
Page 2
ー 日常生活が破綻するほどの副作用 ー 自分らしく生きることを選択
Page 3
ー 病院との関係が切れがん難民へ
Page 4
ー 抗がん剤に劣らぬ成果を出す

 髪の毛がごっそりと抜け落ちる、激しい嘔吐と吐き気、手足のしびれ、起き上がれないほどの倦怠感、食欲不振……抗がん剤による副作用の症状はさまざまあるが、いずれも日常が壊れるほど壮絶なものが多い。

 それでもなお、多くのがん患者が抗がん剤治療を受けるのはなぜか。それは「治るかもしれない」という一縷(いちる)の希望からだろう。

自らを実験台に「最後まで普通の生き方」を模索

 がんの主な治療法は、手術、放射線治療、抗がん剤治療の3つ。がんにはステージ1~4があり、1~3は手術で取り除いたり、放射線をあてたり、抗がん剤と放射線を併用して治療する。

 けれども、がんが最初に発生した部位を越えてほかの臓器に転移するステージ4、つまりがんの最終段階では、今の医療では抗がん剤治療しか選択肢がない。

 緩和ケア医として2500人以上ものがん患者を看取ってきた山崎章郎先生は、「抗がん剤はがんを治す薬ではありません」と話す。

「国立がん研究センターのホームページにも、抗がん剤治療の目的は治癒とは書かれていません。その目的は、命を少しでも延ばすことなんです」(山崎先生、以下同)

 どのくらい延命できるのかというと、やらなかった場合に比べて数か月から数年と個人差がある。ただし、すべての人が延命できるわけではなく、半数以上の人は、強い副作用に耐えても、治るどころか延命もできないというのが現実なのだ。

「抗がん剤はがん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃します。そのため、中には抗がん剤治療により命を縮めてしまうこともあるんです」

 がんは日本人の死因の第1位であり、3人に1人が罹患し、2人に1人ががんで亡くなるといわれている。いつわが身に起きてもおかしくないステージ4という状況……。そのとき、私たちは何を選択したらいいのだろう。