娯楽が少なかった時代の盛り上がり

 ラジオはチャンネル数が膨大で地域差もあるため、思い出のラジオ番組も多岐にわたる。惜しくもランキングに漏れた番組にも、愛のある言葉が届いた。

「昔からKinKi Kidsが好きで『KinKi Kidsのどんなもんヤ!』(文化放送系)を聴いていた。CDデビュー前に2人の曲が聴けるレアな番組だったが、うちの地域はノイズが多くて聴きづらく、電波がよく入るスポットを部屋の中で求めてウロウロしていた」(40代・女性)という、ファンのたゆまぬ努力が感じられる声や「『吉田照美のやる気MANMAN!』(文化放送系)を車の中で聴いていたが、面白すぎて目的地についても降りられなかった」(50代・男性)などの声も。多くの人にとって“ラジオを聴いている時間”そのものが、思い出になっているのだ。

 前出の沖さんは、'80年代・'90年代に放送されていた深夜の生放送ラジオの盛り上がりについて、こう振り返る。

「あのころはインターネットもなく、深夜のテレビ番組もほとんど放送されていない時代。なので“夜中の娯楽”の主流はラジオだったんです。私の番組にも下ネタのFAXはバンバン届いたし、それを面白くするのもパーソナリティーの腕の見せどころ(笑)。時には『今聴いているリスナーは部屋の電気を点滅させてみて!』とお願いして、リスナーが外を見て確認FAXを送ってくれたり、いきなりリスナーにアポなし電話をしたりとたくさん遊ばせてもらいました」

 “生放送”は、リスナーの存在をすぐそばに感じられる場所だった、と沖さん。

「コロナ禍以降、耳で楽しむ娯楽としてラジオの人気が再燃しており、ネットラジオ配信サービス『radiko』を利用する人がとても多いです。再ブームはとてもうれしいし、radikoは地域差がなく、好きなタイミングで聴けるので助かっていますが、その影響からか、生放送をリアルで聴いてもらえない寂しさもあります。この特集をきっかけに、みなさんもぜひ生放送のラジオを聴いて“今”を感じてみてください!」(沖さん)

 55周年を迎える『オールナイトニッポン』はまさしく生放送番組。この機会に気になるパーソナリティーの放送をリアルタイムで聴いてみる?

思い出のラジオ番組

1位 オールナイトニッポン(ニッポン放送系 1967年−) 305票
2位 ジェットストリーム(TOKYO FM 1967年−) 121票
3位 全国こども電話相談室(TBSラジオ系 1964年−2008年) 88票
4位 小沢昭一の小沢昭一的こころ(TBSラジオ系 1973年−2012年) 74票
5位 MBSヤングタウン(MBSラジオ 1967年−) 64票
6位 テレフォン人生相談(ニッポン放送系 1965年−) 57票
7位 ABCヤングリクエスト(ABCラジオ 1966年−1986年) 39票
8位 ありがとう浜村淳です(MBSラジオ 1974年−) 32票
9位 吉田照美のてるてるワイド(文化放送系 1980年−1987年) 30票
10位 パックインミュージック(TBSラジオ系 1967年−1982年) 23票
(※インターネットアンケート「Freeasy」にて2月中旬、全国の40歳以上の男女1000人を対象に実施)

福富次郎(ふくとみ・じろう)(仮名)●ラジオ局プロデューサー。1970年代、神奈川県生まれ。『三宅裕司のヤングパラダイス!』(ニッポン放送系)を聴き、ラジオ業界を志す。大学時代からラジオ局でアルバイトをし、放送作家として台本を作成していたことも
沖直実(おき・なおみ)●イケメン評論家・ラジオパーソナリティー。1964年、東京都生まれ。1992年にラジオパーソナリティーとしてデビュー。その後、2004年からはイケメン評論家としても活躍。現在も『堀江淳と沖直実のJun For You』『沖直実のいい男ラジオ』等のパーソナリティーを務めている。目標は「女性版の毒蝮三太夫さん」とのこと

(取材・文/とみたまゆり)