黄色のスーツをお召しになった理由

 国際社会において、両陛下は大きな役割を担われている。

「戦火にさらされた人々のために、率先して行動することはできませんが、世界平和を祈り続けるお姿を国民に示し、1人でも多くの心を動かすことが大切なのです」(同・皇室ジャーナリスト)

 表立った慈善活動や啓発運動はできないものの、今回のご面会ではお召し物に“平和への祈り”を示されていた。

雅子さまが着用されていたのは、昨年10月に『美ら島おきなわ文化祭』の開会式に出席されたときと同じ黄色いスーツです。ご自身、そして周囲の方々を明るく照らし、鼓舞したいと思われるお気持ちの表れなのでは」

 そう話すのは、歴史文化学研究者で皇室のファッションにも詳しい青木淳子さん。ルーマニア大統領夫人は、ワンピースのウエスト部分に、黄色いベルト状のリボンを締めていたが、これにもメッセージが感じられるという。

「ロシア支配地域では“黄色いリボン運動”が広がっています。ウクライナの国旗に含まれる黄色いリボンをシンボルとし、ロシアに支配された地域の人々に希望を与えるために行われているそうです。

 雅子さまが着用され、大統領夫人がウエストにマークしたのは、平和的な抵抗と反戦を象徴する黄色。心のうちで、世界の安寧を願い続けるという約束を交わされたのかもしれません」(青木さん)

 イエローの装いが、平和の光となることを願いたい。


山下晋司 皇室解説者。23年間の宮内庁勤務の後、出版社役員を経て独立。書籍やテレビ番組の監修、執筆、講演などを行っている

青木淳子 歴史文化学研究者。学際情報学博士。大東文化大学などで非常勤講師を務め、著書に『近代皇族妃のファッション』ほか