診断書をもらうのにこんなにお金がかかるの?

 まずは近所の産婦人科に出向いて、受付で、事情を話しました。

「“離婚後100日以内に再婚をしたいので、妊娠していないことを証明する診断書が欲しい”と。この年齢になっての再婚。しかも、もう生理もないのに、『妊娠していないことの証明書を出してください』なんて言うのは、さすがに恥ずかしかったですよ(笑)」

 えみこさんの言葉を聞いて、看護師さんは、ちょっと申し訳なさそうに言いました。

「診断書を出すには尿検査をしていただくんですが、まずは初診料が2820円、尿検査が2500円、先生に書いていただく診断書が5500円、合計1万820円になりますが、大丈夫ですか?」

 金額を聞いて、えみこさんは、びっくり。

 “ひぇ〜、妊娠していないのがわかりきっているのに、1万円以上のムダ金を使うのか。しかも来年の4月1日を過ぎたら、こんな検査しなくていいのに”と心の中で思ったそうです。しかし、診断書がなければ、現時点では100日以内の再婚はできないので、致し方ありません。

「はい、大丈夫です」

 すると、尿検査を受けるにあたっての問診票を渡されました。そもそもその問診票は、妊娠している可能性のある女性たちが書くためのもの。

「“最終月経日がいつか”を記入する欄があって。どうしようかと思いましたが、月日なんて忘却の彼方。仕方ないから、“52歳のとき”と記入しました(笑)」

 その後、紙コップを渡されトイレに行きました。えみこさんは採尿し、トイレの壁に設置されていた小窓にそのカップを入れました。

 そこから待つこと20分、名前を呼ばれて診察室に入って行きました。えみこさんは着席してから言いました。

「私、59歳なので妊娠できるはずもないのですが‥‥」

 すると、問診票と検査結果の書類を見ていた医師が、微笑みながら言いました。

「まあ、お役所仕事っていうのはねぇ。あ、でも再婚なさるんですね。おめでとうございます。不懐胎の診断書は出しますよ」

「ありがとうございます」

 えみこさんは、ペコリとお辞儀をして、診察室を出ました。

 そして、受付で診断書を受け取り、1万820円を支払って、産婦人科を後にしたのでした。