登場人物が心身ともにダメージを受けるとしんどくなる。日常がしんどいから、ドラマくらいは心穏やかに見たいと思う視聴者が増えているはずにもかかわらず、主人公が人を殺したりどやしつけたりと容赦ない『VIVANT』から視聴者が離れないのはなぜなのか。

 絞首刑のような残酷描写よりも、乃木という人物の謎が少しずつ解き明かされていく快感のほうが上回っているのだろう。毎回、何かしら謎が判明して親切設計だ。第5話の段階で、乃木の経歴や、テントのリーダーのノゴーン・ベキが乃木の父(役所広司)であることまでが判明した。

 公安の刑事で、乃木の素性を怪しむ野崎守(阿部寛)が、ついに乃木の経歴を探り当て、彼のルーツが島根であること、テントのマークが実家の家紋であることを知る流れは、地方都市に犯人の秘密が隠されがちな昭和の推理もののようなムードを漂わせ、野崎がニヒルに乃木について考える場面の演出は、阿部寛が主演したミステリー系日曜劇場『新参者』(2010年 TBS系)を思わせるところもあって、ぐいぐいツボをついてくる。

新事実が明らかになるのではないか、という期待

 カンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞した名優・役所演じる乃木の父は第1話からやっぱり意味深に顔を出し、何者?と話題を振りまいていた。それが乃木の父であり、日本を狙うテロ組織のリーダーだったとは……。あとは、彼と共にいた二宮和也が演じる人物の正体が気になるところである。

 また、第1話から毒舌キャラとしていい味を出していた、乃木のもう1人の人格(F)も徐々に存在感を強めていて、Fがなぜ、乃木の中にもう1人の人格のように存在しているのか、その理由も気になるところ。考察では、乃木が被った過去のひどい経験を忘れるためにもう1人の人格・丹後隼人(F?)が現れた説などが囁かれている。

 乃木が誤送金事件を解決するために向かったバルカ共和国で知り合った世界医療機構の医師・柚木薫(二階堂ふみ)や、彼女が大切に守っているバルカの少女・ジャミーン(ナンディン・エルデネ・ホンゴルズラ)、野崎の協力者ドラム(富栄ドラム)なども、ヒロインや和み系キャラに見せて、たぶんそれだけではなく、今後、実は、実は、と新事実が明かされるのではないかと思うと、見ないわけにはいかなくなる。