採りたての野菜をすぐに食べられるのも畑の醍醐味。夏にフランスで暮らす娘家族が帰国した際、孫を畑に連れて行くと「パピー(農園名)の野菜は美味しい!」と言ってボリボリ食べていたそう。

「トマトをもいで口に入れると至福の味わい。少し前まで畑で採れた夏野菜は毎日食卓に並んでいました。朝、もいだきゅうりのカキーンとした歯応え、トマトの芳醇な香り、新鮮ななすは焼きなすにして、ピーマンはジャコと炒めると最高です。採りたての枝豆のふくよかな味わいも素晴らしく、もぎたてにかなうものなし。この夏は夫婦2人が十分食べられるほどの野菜を収穫できました」

 野菜の出来栄えは天候にも左右されるので、やればやるほど奥が深い。

「今年は雨が少なかったためきゅうりがうまくできませんでした。毎年、梅雨明けに西表島や沖縄北部に10日ほどバカンスに行くのですが、帰ってから種を蒔いたにんじんの芽が出なくて。種を蒔く時期が少しでもずれるとうまくいかないんですね。仕事柄、長い地方ロケが入ったときは、収穫を断念せざるを得ないこともあります」

野菜作りを始めて心身共に豊かに

 うまくいかないときは「努力が足りなかった」と反省はするが「落ち込んでいる場合じゃないぞ」と前向きだ。

「自分で野菜を作れるようになってから、心身共に劇的に豊かになりました。すっかり早寝早起きになり、夜はぐっすり眠れるようにもなりました。ロケの合間に田園の作物を見ながらの散歩も楽しくなりましたね」

 仕事が予定より早く終わると、夜の弁当が用意されていても、なるべく家に帰って夕食を食べるようにしている。早く寝て、また明日畑仕事を頑張るために早起きしよう!というモチベーションになっている。そんな自身の経験から、野菜作りはおすすめだという。

「採れたての野菜の味は至高です。世界にひとつしかない究極の野菜です。ぜひ愛情を持って育ててみてください」

(取材・文/野中真規子)