高額療養費制度の他利用できる制度が

 がんを巡る金銭的な負担を抑えるには、公的な「もらえるお金」をしっかり使いこなしたい。

 まず知っておきたいのが先ほど触れた高額療養費制度だ。これは、病院や薬局で支払ったお金が、ひと月ごとに上限額を超えたら、その超えた分のお金が戻ってくるというもの。

「上限額は年齢や収入によって異なります。70歳未満で一般的な収入なら、おおむね9万円です」

 なお、お金が戻ってくるのは申請から約3か月後だ。立て替え払いができない場合は入院前に、加入している公的健康保険に申請して認定証をもらっておこう。

 認定証を病院の窓口に提示すれば最初から病院窓口での支払いを上限額までに抑えることができる。

 会社員や公務員なら、もらえるお金は他にもある。がんで仕事を休んで給料をもらえない、あるいは減らされた場合は、勤め先の健康保険から傷病手当金が支給される。期間は最長1年6か月で、退職後ももらえるのが心強い。

 がんのために仕事をいったん辞めて、求職活動をする場合は、雇用保険から「基本手当」(いわゆる失業給付)がもらえる。

「注意したいのは、傷病手当金と失業給付は同時にはもらえないこと。仕事を辞めたら残りの期間の傷病手当金を受け取りつつ、ハローワークで失業給付をもらえる期限を延長する手続きをしておき、まずは休養。働けるようになったら失業給付をもらいながら仕事を探すといいと思います」

 がんによって障害が残れば障害年金が受給できるようになる。

「障害年金は、国民年金より厚生年金のほうが手厚く、対象となる障害の内容も幅広い。初診日に厚生年金に加入していたことが受給の条件です」

 女性の場合、抗がん剤服用後の医療用ウィッグや、乳がんの手術痕をカバーする胸部補整具を利用することもあるだろう。自治体によっては、こうした費用に対する助成金を用意している。住んでいる自治体に問い合わせてみよう。