強い倦怠感、睡魔……抗がん剤後に16kg減

手術痕を見せてくれたコーンさん。「幸い傷の引きつれもなくて。(山田)邦子から、乳房再建するなら先生紹介するって言われて断ったよ(笑)」(撮影/佐藤靖彦)
手術痕を見せてくれたコーンさん。「幸い傷の引きつれもなくて。(山田)邦子から、乳房再建するなら先生紹介するって言われて断ったよ(笑)」(撮影/佐藤靖彦)
【写真】「幸い傷の引きつれもなくて」手術痕を見せてくれたコーンさん

 男性乳がんの標準治療は女性の場合と基本的に同じ。コーンさんの抗がん剤治療は一昨年'23年8月から始まり、'24年12月に終了した。

「抗がん剤治療の1回目がいちばん大変だった。帰りのタクシーで気持ち悪くなってさ。首都高に乗っていたから降りられなくて、運転手さんに訳を話して車内でビニール袋に吐いちゃった。袋はギュッと結んで持ち帰ってトイレで処理したよ。それ以降は倦怠感と睡魔がひどいし、身体に力が入らなくて、何もやる気が起きない日々。1年3か月くらいは、副作用がつらかったかな」

 身体に合わず、副作用で3回薬が変わったという。その治療途中、昨年1月に左胸の乳房摘出手術を受けた。

「手術のときは『ガーガー寝てましたよ』なんて言われて。10日間入院して、そのあとは特に傷口の痛みもない。それよりも、抗がん剤が終わってから体重がガクンと減ってしまってね。一時は治療前より16kgも痩せちゃって、今少しずつ戻しているところです。人に会うたびに心配されちゃってるよね」

 現在は、月1回程度の通院。ホルモンの作用を抑えるホルモン剤を服用していたが、肝臓や腎臓の数値が悪化したため、医師の指導のもと一時的にストップしている。

 そんな闘病生活を支えてきたのが、自身が30代のころに結婚した妻だ。夫ががんになっても悲観的にならず、過剰に心配することもない。

「うちのカミさんは俺が乳がんとわかったときも、あまり反応がなくて(笑)。常に冷静な人。『そんなことで死なないでしょ』くらいに思ってるはず。心配されすぎるのも嫌なんで、いつもどおりでいてくれるのがありがたいよ」

 その理由は、コーンさんの過去の大病にあった。

「47歳のとき、飲んだ帰りに足首がパンパンに腫れて。救急車で病院に行ったら、突然腎不全が見つかって。治療しないと『余命3か月』と言われて、透析治療を受けるようになったんだけど、翌年、カミさんから腎臓を1つもらうことになって、生体腎移植をして。おかげでつらい透析治療をやめられたんだ」

 移植により腎機能は回復し数値も安定。さらに52歳では前立腺がんが判明し、放射線治療を受けた。

「もう俺の身体は“病気のデパート”。カミさんはそんな様子を見てきて、自分の腎臓をくれた勇気のある人なんだ。むしろ『これであなたが死んだら私の腎臓はどうしてくれるの。返してよね!』って言ってますよ(笑)」