物価の優等生も価格高騰で高嶺の花
コメと並び、今消費者を悩ませているのが卵の高騰だ。農林水産省の発表によると、3月の卵の全国平均小売価格は1パック286円で、前年比20%増、8か月連続で価格が上昇している。卵の高騰の原因は何なのだろう。
「昨年秋から今年の2月ぐらいにかけて鳥インフルエンザが発生して、800万羽以上が殺処分された。これは日本全体の飼育数の6.5%にあたり、それが供給不足につながった」
とはいえ、鳥インフルエンザの発生は今回に限ったことではない。これまでもたびたび起こってきたが、ここまでの価格高騰は記憶にないところでもある。
「ウクライナ情勢の影響で飼材価格が高騰し、それが卵の価格に反映されている。あとは円安も影響しています。今回の高騰は、どちらかというとコスト高が大きく影響しているかもしれません」
近頃は1パック300円超えも珍しくなくなってきた。長年「物価の優等生」といわれてきた卵だが、その認識自体がすでに危ういものになっているようだ。
「かつて養卵産業は規模がどんどん拡大していたけれど、頭打ちになってきた。限界がきていたところへ、コストが上がってきて、価格転嫁せざるを得なくなってきました。
消費者からすると、値上げは勘弁、というところではあるけれど、事業者にしてみれば、コストが上がった分くらいは価格転嫁させてほしいという話になる。私たち消費者としても、多少は仕方ないよねと、受け入れざるを得ない部分がそろそろ出てきた気がします」
利幅の減少や後継者不足など、現場の問題はこの先配慮する必要があるだろう。しかし、ここまでの高騰となると、消費者としてはやはり苦しい。はたしてこの状況はいつまで続くのか。元の価格に戻ることはあるのだろうか。
「原油の価格も一時期に比べるとだいぶ下がってきて、為替も円高方向に動いているので、多少は飼料にかかる価格も落ちてくるはず。
また鶏がひなから育ち、卵を産み始めるまで5~6か月かかるといわれているので、そう考えると、今年の6~7月あたりから生産量が戻ると見込んでいます。夏くらいから少し価格が落ち着いてくるのではないでしょうか」
ようやく明るい兆しが見えてきたようだ。と思いきや、「安心するのはまだ早い」と森永氏は警鐘を鳴らす。
「例えば、また今年の夏が猛暑になると、親鳥が弱って鳥インフルエンザ発生ということもありうるでしょう。もしくは中東で地政学的リスクが高まれば、原油価格が上がって飼料の値段に反映されることも考えられます。
なのであくまでも値下がりは現時点での希望的観測。不測の事態がなければ、夏以降、価格は徐々に下がっていくでしょう」
日本人の食卓に欠かせないコメと卵。気兼ねなく頬張れる日はいつになる?

森永康平さん●証券会社、運用会社でアナリストとして株式市場や経済のリサーチ業務に従事。現在は(株)マネネ代表取締役社長。
取材・文/小野寺悦子