和雄さんは言い返すことはあっても、恵美子容疑者にほぼ逆らえなかったとみられる。買い物帰りに前を歩くのはいつも恵美子容疑者で、少し遅れて両手に買い物袋をさげた和雄さんがついていった。

 和雄さんのひそかな楽しみはタバコとビール。自宅だと「タバコを吸うな、酒を飲むな」と恵美子容疑者らに責め立てられるため、近くのコンビニで缶ビールを購入し、こっそり喫煙コーナーで一服しながら喉をうるおすのが至福のときだったという。

 決定的な亀裂は、和雄さんが昨年パート勤めを辞め、四六時中お互いの顔を突き合わせるようになってから。元来ズバズバ言うタイプで「バカ」などと言葉遣いが乱暴だった恵美子容疑者は手を出すようになっていた。

夫をひっぱたいたら手が腫れた

《東京・国立市》事件が起きた親子3人で約20年暮らす3LDKの自宅
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【写真】殺人現場となった築30年の都営団地

「数か月前、恵美子さんの手の甲が腫れ上がっていたので“その手、どうしたの?”と尋ねたら“旦那のことが頭にきたから、ひっぱたいてやったら腫れちゃった”と言っていました」(同団地の住人、以下同)

 住人らによると、恵美子容疑者は長男には甘かった。生活が苦しそうなときに「息子さんにもっと稼いでもらったら?」と言うと、黙りこくって言い返さなかったという。

「別の物件を息子さんが借りたことなどについて和雄さんと口論になっていたようです。今も2部屋を息子さんが使っていると聞いていましたから、別に借りなくてもよさそうですが」

 実際、どうだったのか。自宅を訪ねてインターホンを押すと、長男とみられる男性が「はい」と、か細い声で応答した。ところが、取材したい旨を告げるとブチッと切られ、再度押しても応答はなかった。

 恵美子容疑者は110番通報した直後、住居棟のエントランス前の路上に出ていた姿を目撃されている。通りかかった知人らしき住人に対し「ついにやっちゃった」と言い、何をやったのか尋ねられると「旦那を殺しちゃった……」とつぶやいたという。

 長年連れ添いながら、なぜ悲しい結末を迎えたのか。