お金に関しては肉親や親戚でも注意が必要。身内とはいえお金を要求してくる人もいるかもしれません」(石川さん)

遺言は後期高齢者になる前に用意すべき

 親族からでもお金を“奪われる”ことがあるという。石川さんの元へ相談に来た千葉県在住の40代主婦、Cさんの話。

「Cさんの夫の実父が亡くなったときの話です。実母は先に他界していたため、『死んだら遺産をおまえたちに』と言われていたそうです。Cさんは夫の実父の介護をしていて、ほとんど働くこともできなかった。

 なので、将来、遺産を自分たちの老後資金にできたら助かると考えていました。しかし、実父には後妻(Cさんの夫の育ての母)がいました。その後妻が『遺産は私一人が受け取りたい。私が死んだら遺産は全額、おまえ(夫)にいくから今はそうして』と。

 血のつながりのない後妻とはいえ、育ての母。それに高齢の独り身ですから、Cさん夫婦は了解したそうです。ですが、なんと養子縁組もされていないことがわかりました。遺産をCさん夫婦がもらえることはありません

 この場合、たとえ後妻が亡くなっても、Cさんの夫へお金が戻ることはなく、「奪われた」格好となった。

親戚との関係を大事にしたい。あるいはこの人に残したい、残してほしいと思うなら、意思表示が何より大切。具体的には遺言を書く、書いてもらうことをおすすめします

 その遺言も、後期高齢者になる前に用意すべきという。

本人は認知機能に自信があっても、周囲はそうは見てくれなくなることもあるからです。75歳になる前に、練習のつもりで書いてみては」(石川さん)

 家族がお金で争う“争族”ほど悲しいことはないとまるこさん。

誰にどれくらい残すかを、自筆で書く自筆証書遺言ぐらいは毎年作ってもいいように思います。公証役場に届けるまではしないまでも、その年ごとの家族の経済状況を知っておくのにおおいに役立つはずですから

 身内との関係を大切にしたいと願うのならば、はっきりとした意思表示が何より大切と、両FPは口をそろえる。

 わが子を原因とする老後資金の逼迫も。まるこさんが相談を受けた青森県のDさん80歳の話。

息子が若いころからずっとひきこもっているそうです。人間関係で会社に行けなくなったようで。これまで妻と2人で面倒を見てきましたが、とうとう手持ち資金が底をついて。親子3人、これからどうやって暮らせばいいのやら……

 老老介護に働けない息子、不安ばかりの毎日だという。

共依存で親子双方が困窮するこうしたケース、最近は特に増えています。家族の問題と抱え込まないで、相談できるところを探してみてください。そうしないと共倒れしてしまいます」(まるこさん)