青山学院の原監督も「見た」
その懸念を裏づけるように、青山学院大学陸上競技部の原晋監督も、TBS系『ひるおび』でクマ問題に言及した。
「夏の合宿で山に行ったときに、何頭か見ました。もし襲いかかられたらと思うと、管理者としてゾッとした。人間との距離感をどう作っていくかが大切だと思います」
原監督が語るように、もはや“クマに出会う”ことは珍しい出来事ではなくなっている。関係省庁が11月6日に開いた対策連絡会議によると、今年上半期の出没件数は速報値で2万792件と、過去5年間で最多。死者は13人にのぼり、すでに過去最悪を更新している。
出没件数は上半期だけで2024年度1年分(2万513件)を上回るペース。環境省も「過去に例を見ない異常事態」として警戒を強めている。
では実際、箱根駅伝の運営側はどう備えているのか。関東学生陸上競技連盟(関東学連)に取材した。
「関東学連としては、箱根町観光課と連携を取って対応しております。現状は箱根町観光課から、クマの出没は確認されていないとの情報を得ております。今後も箱根町と連携して対応してまいります」
つまり現時点では出没情報はなく、町ぐるみで警戒を続けているという。箱根は観光客も多く、ランナーが走る国道や山道は人の往来が多いため、他地域に比べて出没リスクは低いとみられている。
それでも「油断は禁物」と語るのは登山ジャーナリストだ。
「ドングリなどのエサが不作になると、クマは山から里に下りてくる可能性があります。箱根も例外ではありません。さらに厄介なのが“冬眠しないクマ”の存在。例年なら冬眠に入る時期ですが、温暖化の影響で活動を続ける個体も確認されています。実際、11月以降も出没報告があり、油断できない状況です」
駅伝関係者の間では、今後の大会運営において「自然リスクへの備え」が新たな課題となりつつある。気象条件や交通規制だけでなく、野生動物との“距離の取り方”が問われる時代に入ったのだ。
とはいえ、ランナーたちの集中力を削ぐことは避けたい。原監督の言葉を借りれば、「人とクマの距離感」を冷静に見極めることが何より重要。選手と観客の安全を最優先に、警戒と連携を怠らない。
それが今、駅伝運営に求められる“新たなリアル”なのかもしれない。











