いじめか一見判断がつかない、スクールカーストの存在が社会問題になっている。

 スクールカーストは教室内での身分制をさす言葉。同学年の同級生でありながら、どのグループに属しているかによってクラスでの地位が決まる。いわば階級社会が子どもたちによって作られているのだ。

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*写真はイメージです

 キャラと並び、もうひとつキーワードとなるのが“コミュ力”ことコミュニケーション能力だと『教室内カースト』の著者で、秋田大学大学院助教の鈴木翔さん(教育社会学)は分析する。

「異常に重視されていますね。でも僕は、コミュ力に長けているからカースト上位になるのではなく、その逆だと思っています。上位の子たちはクラスで権力を持っているので、自分が思うとおりに振る舞える。いろんな人とコミュニケーションをとって、ニコニコお話しして、みんなから笑いをとれるわけです。そうした上位カーストの恩恵で、コミュ力があるように見えるのではないでしょうか」

 鈴木さんの著書に登場する子どもたちは、各グループの種類をさまざまな名称で表現している。カーストの上から順に、ギャル・キャピ系・普通・地味・オタク・残念な人。ヤンキー・清楚系・普通・地味。クラスで幅をきかせる特権階級には、いずれも自己主張できるタイプが目立つ。

「気が強い子とか、女子だとかわいい子、おしゃれに気を遣っている子あたりが上位に来ます。ただ、上位になると、下位の子をいじらなければならないなど、常に上位らしい振る舞いが求められる。それに息苦しさを感じている子どもは珍しくありません」

 スクールカーストは生徒だけを縛るものではない。カーストの存在を問題視するでもなく、能力差とみなす教師もいるからだ。

「今の学校現場では、先生たちは“勉強やスポーツ以外も評価しろ”“もっと生徒のいいところを見つけろ”と言われています。となれば、みんなと協調的に生活するコミュニケーション能力に行きつく。カースト上位の生徒を評価せざるをえない状況にあるのです」

 ひとたび固定化された地位を覆すことは難しい。

「地位が固定化されると、“自分より下なんだから、これぐらいは……”というノリが共有されます。すると悪気もなくいじめがエスカレートしていく。最初は探り探りやっていても許容範囲が押し広げられ、その結果、ニュースで報じられるような自殺事件にまで行きつくこともあります」

 鈴木さんは訴えかける。

「スクールカーストはずっと続くわけじゃない。たまたま運が悪かっただけで、きみのせいではないよと大人が言ってあげる。それだけでかなり違うと思います」