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 “グランドロマン”と呼ばれ、人気を博した『愛の嵐』『華の嵐』『夏の嵐』の“嵐3部作”に主演した渡辺裕之。30歳のときの第1作『愛の嵐』に、背水の陣で取り組み、ブレイクした。

「役者として鳴かず飛ばずだったので、これでダメだったら、長男なので実家に帰って、カメラ店を継ごうと思っていました」

 スタジオドラマはほぼ初めて。映画の経験はあったが、劇団在籍は1年足らずと短く、演技の基礎を身につけるため独自の方法を音楽に見いだした。

「ジャズでのアンサンブルでダイナミズムや間を作ることは、芝居にも通じる部分がある」

 ジャズドラマーでもあった渡辺は、ドラマの収録と並行しながら週3日、ライブハウスにノーギャラで出演。ハードスケジュールをこなしていた。

「1日3時間ぐらいしか寝てないけど、平気でした。脚本が素晴らしく、プロデューサーも男気のある方で(現場の)雰囲気もよかったです。収録は大変でも、それが心地よかったし、働いている実感があった」

 今では当たり前だが、30年前は珍しかった役作りのために身体を鍛えることも。

「当時は筋肉を鍛えるのは下に見られましたが、顔だけでなく身体でも表現できなければと思って、毎日トレーニングしていました」

 食事は毎朝、ごはん、みそ汁、卵入り納豆と、タンパク質をとるため生卵の白身だけを5個摂取。スタジオにはバーベルを持ち込み、パンプアップ(筋肉を膨らませる)してからランニング姿での薪割りシーンを収録した。

 3部作に共通する、身分の差を乗り越えた激情型恋愛は、主婦だけでなく女子中高生の間でも大人気に。

「学校の昼休みに家に帰って見るので、5時間目に遅刻した生徒がいたと、聞いて驚きました。(3部作は)遅咲きの僕にとって、恵まれた作品で、転機にもなり、宝物です」

 東海テレビの昼ドラには、その後、3作品(『愛と罪と』『新・愛の嵐』『潔子爛漫』)に出演している。

「僕にとっての古巣。(昼ドラが終了するのは)実家がなくなるみたいです」