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 歌舞伎俳優・市川海老蔵の妻、小林麻央が、1年8か月もの間“乳がん”の治療を続けていたことが報道されて2週間。心配される病状について、国立がん研究センター中央病院乳腺外科科長の木下貴之医師は、こう話す。

「若いから危ないというわけではない。“がん”のタイプによります。タイプによっては治療法が少なく、悪性度も高いため、予後も悪くなる。乳がんの初期治療として、半年ぐらい抗がん剤治療を行い、がんを小さくしてから外科手術を行います。抗がん剤治療が半年より長いのは、病状だけの事情ではないかもしれませんね。私たちとは違う世界の人ですから」

 そもそも“乳がん”はどんな病気なのか。

Q 乳がんは治りやすいって本当?

 国立がん研究センターの統計によれば“乳がん”は1966年では死亡者が年間約2000人だったが、2013年には約1万3000人に達した。病気にかかる人数も1975年には約1万人から2011年には8万人を超えた。年齢別では、35歳から徐々に増加し、40代、50代、60代と右肩上がりで増加。2011年のデータに基づくと、日本人女性の12人に1人が“乳がん”を患うとされる。

「生存率が高く、治療後の予後もいい。早期発見することが大切ですよ」(前出・木下医師)

 国立がん研究センターが公表した資料によると、治療を開始して10年後に生存している確率は80.4%で肺がん33.2%、食道がん29.7%、肝がん15.3%という他のがんと比べて高い。

Q 乳がんを見つけるにはどうすればいいの?

「乳房のしこりに注意といいますが、しこりがあるから乳がんというわけではありません。間違えやすい病気では乳腺症、乳腺炎、乳腺線維腺腫(良性腫瘍)などがあります。“乳がん”の場合は、乳頭からの分泌物に血が混じっていたり、片方の乳房からしか分泌物が出なかったり量が多いときは“乳がん”の可能性も」(前出・木下医師)

 セルフチェックによる発見が大切だと木下医師は訴える。

「他のがんと違って、自分で発見することができるのが乳がんです。生理前は乳房の張りや痛みで正しい判断が難しいため、毎月生理が終わった5日から10日後に定期的に乳房の状態を確認しましょう」

 鏡の前に立ち両腕を上げ、左右の乳房の大きさに違いはないか、くぼみや腫れや赤みがないかを確認する。次に指をそろえ渦巻き状に、指の腹で軽く押して触りながら、しこりがないか確認する。ここで注意する点とは?

「決してつまんではいけません。しこりがあると思うと、乳管も、しこりのように感じてしまう。“がん”ができやすいのは上部ですが、乳房の下部や乳頭部分も見落とされがちです。異変があると思ったら、すぐに病院で検査を」(前出・木下医師)

 検診での発見については、こう続ける。

「若くても乳がんになる人は決して少なくない。ただ若いと乳腺組織が多くマンモグラフィー(乳房X線撮影装置)では判断ができないこともあるので超音波検査と並行して行いましょう。超音波ではマンモグラフィーでは見つけられない小さい“がん”を見つけることができます。

 40代からは自治体で行っている検診には積極的に参加してほしいですね。その時期を“乳がん”は狙ってきます。しこりを作らない“乳がん”もあるので早期発見のためにも必ず受診を」(前出・木下医師)