これに対し、横浜市の学校に保管されている指定廃棄物は、この基準の80倍の8000ベクレルを超える。

「なぜ二重基準になっているかと言うと、福島原発事故によって、東日本全域に放射性物質が大量にふりまかれたため、'12年に施行された『放射性物質汚染対処特措法』のもと、福島事故由来の放射性物質の基準は8000ベクレルにまで暫定的に引き上げられたからです。

 この暫定法のもとでも指定廃棄物は特に汚染度が高く、国・環境省の責任で処理するよう定められています。5年もたつのに今日まで放置しているのは、国の怠慢と言うしかない。一刻も早く学校外へ出すべきです」

 環境省は、最終的な処理のめどが立っていないことを横浜市に任せている理由とし詫びながらも、

「保管場所をどうするかは保管者たる横浜市の判断になる。放射線が遮蔽できるよう基準を満たしていれば、どこでもかまわない」(同省指定廃棄物対策チーム)

 一方、市は指定廃棄物について「本来、国で処理すべき」とし、さらに「集約保管する場合、近隣の方の理解を得るのはなかなか難しいだろうとの判断から、暫定的に学校での保管を決めた」(放射線対策本部事務局)経緯がある。

 放射線防護を専門とする立命館大学の安斎育郎名誉教授は、次のようにクギを刺す。

「国の主導で移せば前例を作ることになるから、環境省としては避けたいのでしょう。廃棄物は分散させるのではなく1か所に集中させて、人間の被ばくに結びつかないような場所で管理するのが原則。やはり国が責任をもって進めなければなりません」

 前出の青木さんも、こう語る。

「東京電力が起こした事故による指定廃棄物ですから、環境省の指導のもとに当面、原発施設内で保管させるのが筋。全体量が約3トンなので、17校全部の指定廃棄物をドラム缶ごと運んでも、10トントラック2~3台ですむ。横浜市は学校に保管していたことを恥じ、ママさんたちの声を生かして、ただちに環境省に移管を申し入れるべきです」