大統領就任式で演説するトランプ氏。言いたい放題だった=日本時間1月21日

 のっけから印象的な装いだった。大統領就任式では真っ赤なネクタイを長く結んでブラブラさせた。共和党のドナルド・トランプ氏(70)は20日(日本時間21日午前2時)、米連邦議会前で宣誓して第45代米大統領に就任した。

 就任演説では「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を連呼し、

われわれは富を取り戻すだろう。2つのルールを守りたい。米国のモノを買う。そして米国人を雇用する。自分たちの利益を最優先してください

 などと恥ずかしげもなく観衆に呼びかけた。

 日本はこの男にどこまでかき回されることになるのか。ジャーナリストの須田慎一郎氏は「最も心配していた事態はすでに起こっています」として、次のように話す。

トランプ氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに答えて“ドルは強すぎる”と言いました。実力行使でドル安に持っていくのではないかとマーケットが反応し、ドル安円高の流れになりました。

 安倍政権の発足以降、日本の企業は円安に乗って大きなプラス効果を得ていたので、それが逆流し始めるおそれがあります

 具体的には円安でどのようなダメージを受けるのか。

「日本は輸出立国です。例えば、トヨタ自動車は、円安に1円動けば年間の利益が約400億〜500億円増えるといわれています。自動車、エレクトロニクス、家電、電子部品、建設機械や工作機械といった輸出産業は日本経済の牽引役なので、業績が悪化すれば日本経済全体に悪影響を及ぼします。

 円安で景気が浮上しかかっていた日本経済が失速しかねない。アベノミクスは円安にすることを目的にしていましたから、真逆の方向です」(前出・須田氏)

 ほとんどの国民はアベノミクスの恩恵を受けていないのに、もう終わりでは話が違う。そんなに米国経済は冷え込んでいるのか。須田氏は「むしろ好調ですよ」と話す。

それでもトランプ氏は中国、メキシコ、日本を名指しして米国の貿易赤字を減らしていくと発言しています。GDP(国内総生産)がプラス成長すると景気がよくなり、貿易赤字額が少ないほどGDPはプラス成長します。貿易赤字を圧縮するのは手っ取り早い方法なんです」(須田氏)

 短期的には効果が上がっても、中長期的にみれば競争力が弱まるなど米国経済にとってもマイナスで、日本経済にも世界経済にもマイナスの影響を与えるという。