いやな仕事でも「後ろ向き」に判断せず、とりあえず「はい、わかりました」と言う

「いやな仕事はやりたくない。でも、成果は上げたい」

 このようなオファーを受けたときには、とりあえず「はい。わかりました」ということがひとつの方法になります。

 人間の体は、ストレスに対する防御反応が備わっています。「いやな仕事だな」と思ったときに、すでに脳はストレスを感じるので、「なるべく避けたい」と自然に回避の道を模索するのです。結果として起こりがちなのは、仕事に対する言い訳といえます。

「この仕事で大きな利益を上げられるとは限らない」「手間暇をかけても成果になりにくい」「自分以外の人でもできるだろう」など、仕事を回避するための思いは次々と浮かんできます。もちろん、仕事内容によっては、受けない方が無難なことはあるでしょう。無理難題の業務で遂行不能なことを手掛けても、時間の無駄にしかなりません。それで健康を害しては踏んだり蹴ったりともいえます。

 仕事内容を考慮して「受けません」と決断するのは前向きな考え方ですが、「やりたくない」ために「しばらく考えさせてください」というのは後ろ向きな判断です。とりあえず「はい。わかりました」といって引き受けると、前向きな気持ちに後押しされて、意外な成果につながることもあります。

他人からの「自己否定」は自らの「欠点を克服」するチャンス

 ある日突然、部下が会社を去っていくということは珍しいことではないでしょう。「あれほどかわいがっていたのに…」「私の方法のなにがいけなかったのか…」などと考えると、自己否定のような思いが膨らんで落ち込みがちです。しかし、去っていく部下に心を痛める必要は全くありません。

 四半世紀も前から成果主義を導入する企業は増えています。仕事の仕方は多様化しているのです。このような状況では、転職してキャリアアップを目指すことも、当然でしょう。誰もが「よりよい職場で実力を発揮したい」と思うのは当たり前なので、その選択として会社を去る部下に、自分や職場が否定されたように感じる必要はないのです。

 一般的に、好きな人から「あなたは太っていて私のタイプではない」といわれ、一念発起してダイエットに励み、見違えるように素敵な姿になる人がいます。好きな相手が驚けば、自己満足にもつながるでしょう。相手からの自己否定は大きなストレスになるものの、それを上手く利用すると、自らの欠点を克服するチャンスになるのです。

 他人からの自己否定は、成長の糧になります。一から十まで否定され続ければ、過度なストレスで心身に悪影響を及ぼしますが、1つや2つの自己否定は、ご自身の成長の後押しになるのです。やがて、自己肯定につながると思いましょう。

※写真はイメージです
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北條元治(ほうじょう・もとはる)◎株式会社セルバンク代表取締役、RDクリニック顧問、東海大学医学部非常勤講師、形成外科医、医学博士。1964年、長野県生まれ。1991年、弘前大学医学部卒業。信州大学医学部附属病院勤務を経て、ペンシルベニア大学医学部で培養皮膚を研究。帰国後、東海大学医学部にて同研究と熱傷治療に従事。2004年、細胞保管や再生医療技術支援を行う株式会社セルバンク設立。2005年、RDクリニック開設に際し、培養皮膚の特許を供与。著書に『ビックリするほどiPS細胞がわかる本』『医者が自分の家族だけにすすめること』など多数。