裁判を武器にした原発避難者の闘い

 事故をめぐって、国や東京電力の責任を問う動きは全国で広がり、多数の裁判が起きている。3月17日に群馬県の原発訴訟で判決が出され、21日には全国最大規模の『生業裁判』が結審される。避難者に対する風向きは変わるだろうか?

「風評じゃない。実害ですよ。農家が死に物狂いで努力して作物への移行が低くなっただけで、放射能汚染が消えたのではない」

 二本松市に住む服部浩幸さん(47)は『生業を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟の原告団事務局長を務める。生業裁判は、原発事故を起こした東京電力と国に対し、事故で汚染された地域の原状回復と被害の救済を求める訴訟だ。原告は4000人超。裁判を通じて責任の所在を明らかにし、原告にとどまらない被害者救済と全国の原発をなくすことを目指しているという。

 被災当時、物流が止まる中で、スーパーを営む服部さんは必死だった。

「商売が最優先で子どものことや放射能汚染のことを考える暇はなかった。地域の人たちに食べ物を供給しなくては、とそれだけで」

 前出の石田さん同様、子どもたちへの責任を今、痛烈に感じている。

「震災から6年目で甲状腺に嚢胞(のうほう)が、上の娘にも、下の息子にも見つかった。健康への憂いは消えない。せめて、病気や症状が出てしまったときに、しっかり対処する制度が欲しい。子どもが優先されるのはわかるけど大人にも検査体制の整備は必要。今は健康リスクが矮小化されています」

 事故後、数年はガマンした趣味のサイクリングを久しぶりに再開した。苦しくなりゼーゼーと息をつき、ふと横にあるフレコンバッグの山が目に入った。除染で出た放射能汚染土や汚泥が詰まっている。

「あれ、ここ、サイクリングしていいのかなって、ふと思ったんです」

 放射能は今も身近にある。そもそも原発の廃炉も見通せない状況だ。

「先日、少し大きな地震があったとき、真っ先に原発は大丈夫か!? と思った。この不安は、福島にいる人なら誰でも感じていると思う。被害を受けていない人なんてひとりもいない」

 事故後も福島を離れなかった服部さんだが、自主避難者の住宅支援打ち切り問題も気にかけている。

自主避難した人たちが助かってほしい。でも“逃げたやつ”とか“復興の妨げ”という地元の声があるのは残念。自主避難は“不要な避難”と言われてしまうけれど、そうではなく被ばく回避行動のひとつですよ。ならば、われわれ滞在者も一緒に助けてと言いたい。分断を乗り越えて、被ばく回避策を避難者・滞在者の両方につくれ、と国や東電に訴えたい。同じ被害を受けたもの同士ですから」

二本松市で山積みにされたフレコンバッグ。経年劣化による破損も気がかり
すべての写真を見る