羽生の背中を追う宇野昌磨は4回転の安定感が増してきた(左)。四大陸で羽生を抑え優勝した4回転ジャンプの申し子のチェン(中央)。ショートでは卓越したスケーティングを見せたフェルナンデス(右)

「バンクーバー五輪で4回転論争が白熱しました。金メダルに輝いたエヴァン・ライサチェクが4回転に挑戦しなかったことで、一部からブーイングを受けたが、そのときに“回転数にこだわるなら、そういう競技を作ればいい”と彼は主張したんです」(スポーツ紙デスク)

 フィギュアスケートの魅力を象徴する出来事だった。

ジャンプを追求し始めると、みんながジャンプを跳び、ジャンプがステータスになる。当然ながらプログラムは面白くなくなるものです。ところが、ある程度まで跳べるようになると、プログラムでどう見せるかというところに趣が移る。その繰り返しで発展してきているんですね」(佐野氏)

 まさに4回転時代のなかで、絶対王者といえども羽生は次のステージを見据えているのだろう。

《振付師にもらったプログラムにジャンプを組み込んで“演技”するのが自分の仕事です。すべてのジャンプがきれいに決まってこそ本当に演技だといえる。だからこそ、新しい四回転ジャンプを入れ、昨シーズンより難度を上げた構成にしながらも今季まだ自己最高得点を更新できていないのが本当に悔しい》(『文藝春秋』'17年2月号)

 美へのこだわりこそが、ゆづクンのスケーティング。実際、今季はショートプログラムでは毎回、振り付けが変わっていった。

ジャンプのほかの要素、特にスピンやステップ、技間のつなぎでの手の振り付けは自分で考えているそうです。観客や審判員にアピールしたり、音をしっかりとらえて肩を上下させたり、それに合わせて指を鳴らす仕草を取り入れたりと、ジャンプだけではない部分にも重点を置いて競技に臨んでいるんです。まさに美を追求し続けてるんですよ」(前出・スポーツ紙記者)

 プレシーズンを最高の形で終え、いよいよ来年2月に平昌五輪が開幕する。貪欲に進化を追い求める絶対王者が、大一番で日の丸を真ん中に掲げてくれるはずだ。