昼間の恐怖が“夜行性”原点に

「火球が落ちてきたんです。流れ星の大きさは、いつも見ているから知っているわけですよ。それよりもずっと大きいもので、当時は“隕石”なんて知らなかった。不思議に思いながら火球が飛んでいくのを目で追っていたら、金縛りになったんです。

 それから、昼間が怖くてたまらなくなった。日中は、身体が震えてね。そのくらい、ショックだったんだと思います。いままでガキ大将で走り回っていたのに、夜しか動けなくなった。日が暮れると母親に気づかれないよう、そっと家を出て、お月さまの輝きに吸い込まれそうになりながら歩くんです。そのときは、怖さなんてなくて、むしろ安心するんです」

 月明かりの中、山道を歩きながら隕石を見たときのことを思い出した。故郷を追放され、地球ではない惑星から来た宇宙人が、人間の身体の中に入り込み、人である苦しみを味わうことで自らの罪を贖う、そんな想像を膨らませながら。

モノを書いたり、詩をつくったりするようになったのは、この経験が原点。もうひとつ、夜、山道を歩いていたことで、夜目がきくようになった」

 隕石を見たのは、夏休みに入ったばかりだったこともあり、休みが終わるころには“昼間の恐怖”を克服できていたそう。

夜目がきくようになって、夜行性になりました。だから、街でも夜行性(笑)。これまで、素晴らしい出会いや経験ができているのも、この体験があるからかな。小さいころに、火球を見ないといかんな(笑)」

 幼少期から絵が好きだったように、映画も「ものすごく好きで、見た作品は全部おぼえている」と語る。実は、隕石を見たのも、映画の帰り道だった。いまでも、テレビで映画を映しながら原稿を書いている。“酒場”と同じように愛する映画、それも自身が出演していて、見た人は必ずその足で“酒場”に行きたくなる作品。どんな期待をもって劇場に足を運んでほしいか聞くと、

「女性でしたら、この映画を通して“酒場”の一端を知っていただくのもいいと思う。いろいろなことを勉強できると思いますし、知識を増やすためにも“酒場”は、オススメです。

 ただ、お酒は幸せになるためのもの。“お神酒”というように神様から与えられたもので、その思いで造られているんです。神聖なものであるということをわかってほしい。

 僕ら酒飲みも、お酒をけがさないような飲み方をしようと気をつけている。だから、スマートに格好よく、とはいっても酔っぱらって、そこからはずれることもあるかもしれないけれど(笑)。でも、そんなことを心がけながら、“酒場”の魅力を味わってください」

「最期」の質問です

映画『吉田類の「今宵、ほろ酔い酒場で」』6月10日(土)角川シネマ新宿ほか全国公開   配給:KADOKAWA (C)2017『吉田類の「今宵、ほろ酔い酒場で」』製作委員会
映画『吉田類の「今宵、ほろ酔い酒場で」』6月10日(土)角川シネマ新宿ほか全国公開   配給:KADOKAWA (C)2017『吉田類の「今宵、ほろ酔い酒場で」』製作委員会
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 人生、最期に飲みたいお酒は?

「日本酒『金凰司牡丹(きんおうつかさぼたん)』。蔵元と生まれ育った場所の水系が一緒なんです」

 死ぬ前に食べたいものは?

うつぼのしゃぶしゃぶ。白身で、フグに似ています。てっさ(フグ刺し)より厚めに切って、ポン酢で食べる。皮を長めにしゃぶしゃぶするとコラーゲンがとろっとろになっておいしいんですよ。いまは、高知でしか食べられません」