食べ残しが地球規模のダメージに

 環境省で食べ残し問題に取り組むリサイクル推進室の小林豪室長補佐は、ひとりひとりの食べ残しが大量に集まれば地球規模のダメージをもたらすことについても語る。

食品は捨てられると生ゴミになります。水分を含む生ゴミは非常に燃えにくい。他のゴミよりも焼却のための燃料を消費します。食べ残しを減らすことは、実は地球温暖化対策など環境問題ともつながっている

 そのため今年5月、環境省は消費者庁、農林水産省、厚生労働省とともに、『飲食店等における「食べ残し」対策に取り組むにあたっての留意事項について』を発表した。

 食べ残しの持ち帰り推進や宴会での食べきり、ほかにも消費者に対し、自分自身の食事の適正量を知ること、食べ放題の店で元を取るために無理して皿に盛らないように、といったことが書かれている。

 外食先で食べきれない食品の持ち帰り運動を長年呼びかけている、愛知工業大学経営学部の小林富雄准教授は、食品持ち帰り用のドギーバッグの利用を推奨。「持ち帰りはあくまでも自己責任という点を理解しましょう」と自己責任を強調する。

 ただし食中毒を防ぐために、

「容器は清潔なものを使う、帰りに寄り道をしない、直射日光が当たる場所には置かない、などに注意し、何が持ち帰れるかを吟味しましょう」

 小林准教授は大量の食べ残しの背景には、バブル時代に食べ物も余ることが豊かさと考えられるようになり、食べ物を持ち帰ることに恥ずかしい感覚が生まれたことを指摘。

「かつて日本は持ち帰りに寛容で、宴会などで余った食材を持ち帰る、折り詰め文化がありました。今の時代に復活してもいいのではないでしょうか」と提案する。

無駄を省く“始末”は日本人の美徳だったが……(写真はイメージです)
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 環境省などの資料によれば日本では、本来食べられるにもかかわらず廃棄される『食品ロス』が、年間約621万トン。うち約339万トンが外食や製造業などの食品産業から発生しているという。

 一方で、「日本の貧困家庭は人口の約16%、2000万人ほどいるといわれています」

 そう指摘するのは、生活困窮者らに無料で食材を提供するなどの活動を行うフードバンク『セカンドハーベスト・ジャパン』の田中入馬マネージャーだ。

 今日食べる食事にも困窮する人がいる一方、遊び半分で食べ物を無駄にする人もいる。田中さんは呼びかける。

「食品ロスを減らすためにできることは、外食する際に頼みすぎない、食べきるなど、ひとりひとりの心がけしかないのです。お金を払って購入すれば、自分の所有と考えますが、食べ物の背景には生産者や調理をする人などがいる。その人たちの“顔”が見えなくなっていることも、食をないがしろにする理由ではないでしょうか

 多くの動植物の命をいただいているから「いただきます」。命を無駄にしないという気持ちをもう1度かみしめる必要がありそうだ。