古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、テレビ業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第24回は樋口卓治が担当します。

井ノ原快彦 様

 今回、私が勝手に表彰するのは、イノッチこと、V6の井ノ原快彦さんである。

V6の井ノ原快彦

 テレビでイノッチが笑うとクラスが一つになるように楽しい空気が流れる。小学校の頃、教室で聞こえてきたゲラゲラと弾むようなあの笑い声だ。あの笑い声を聞くとどこからともなく元気が湧いてくる。

 あれだけ人柄、気遣いの入った笑い声はない。一人ドリフの大爆笑と言ってもいいくらいだ。

 笑顔の伝染は有働アナの表情も豊かにしているし、笑顔があるから真剣な話も心に刺さるのだ。

 私と朝のお茶の間の顔、『あさイチ』でお馴染みイノッチとの出会いは、1997年秋にスタートした『学校へ行こう!』(TBS系)だ。

 あの頃、報道番組で「キレる中学生」「バタフライナイフ」と暗澹(あんたん)たる灰色のニュースが流れていた。そんな中、学校は楽しい、学校は捨てたもんじゃないってことを確かめたくて番組は始まった。当時30代の放送作家たちは、楽しさを共有しようと、わざわざ手書きでネタを書いて提出した。『未成年の主張』『B-RAPハイスクール』が生まれ、生徒たちとV6の笑い声がこの番組を牽引(けんいん)した。

 ある日、テニスプレイヤーのシャラポワにセーラー服を着てもらおう! という企画が会議で盛り上がった。

 当時17歳だったマリア・シャラポワは世界が注目する大スター。そんな、すっとこどっこいなオファーを受けてくれるはずがない。それでも、あの頃は「イチかバチかやってみよう!」というノリでロケが決まった。ロケをするのはイノッチ。シャラポワはアメリカのマイアミで大会に出場中という『ぴあ』に載っているような情報しかない。

 もちろん、シャラポワに連絡もしていない。あまりにも何も決まっていないので、ディレクターの他に放送作家が同行することになった。なんか知らないうちに自分が付いて行くことになった。

 日本を飛び立ったのはイノッチ、ディレクター、AD、プロデューサーと自分。現地に着いて、事の大変さに気づく。一体、何をロケすればいいのか。