ここ数年、都内の公園でセミの幼虫が乱獲される事態が相次いでいる。
食用目的?セミの乱獲問題
猿江恩賜公園(東京都江東区)では、日本語、中国語、韓国語、英語の4カ国語で「セミの幼虫を採取しないでください。子供達がセミを楽しみにしています。」という注意書きを各所に掲示。他にも、食用や販売目的での採取を禁止している公園もある。
「SNSでは乱獲の目的が《食用のためなのではないか?》という疑惑が寄せられています。というのも、中国のSNS・小紅書(RED)では、日本でセミの幼虫を食用として捕獲している様子が多数投稿されているのです。公園の所在地、何匹とれたかという収穫報告、《日本に来てセミを食べなさい。日本人は食べません》といった収穫を促す投稿などが見られます。
中国では一部地域でセミの幼虫を食べる習慣があり、素揚げにしておつまみやおやつとして親しまれているようです。近年ではその人気が高まり、価格が高騰していると聞いています」(地方紙記者)
食用目的での乱獲疑惑を受けて、ネット上では
《最近セミの鳴き声が聞こえなくなったのは食用にされてるからってこと!?》
《え?セミ…食べてるの?よく食べようと思うよね》
《その辺にいる虫を採って食べるとか理解できない。日本では考えられない非常識さ》
と困惑の声が広がっている。

日本ではあまり馴染みのない昆虫食。無許可での乱獲は断じて許されるものではないが、その栄養価の高さやSDGsの観点から昨今、世界中で注目されているのも事実だ。
そこで、現在開催中の大阪・関西万博で昆虫食ブースを出店していた近畿大学発ベンチャー・株式会社POIの代表取締役、清水和輝さんに昆虫食について話を聞いた。
「弊社では、コオロギやセミ、スズメバチ、サクラケムシ、カメムシ、カイコなどの昆虫食を扱っています。特にスズメバチが人気で、よく出ますね。セミでいえば、行政と連携して適切な手続きを踏んだうえで、セミの採取や観察、試食などのイベントも行っています」
昆虫食の人気ぶりについては
「昆虫食はまだ一般には浸透していませんが、根強いファンは多いのと、イベントや講演などではよくお買い求めいただきます。また、一部の店舗や地元・奈良県ではお取り扱いいただているところもあります。」
と語る。また、気になるその味は?
「先入観もあると思いますが、実際に食べると案外おいしく食べられたという声は多く、不味いと言われたことはほぼないです」
一方で、自然界にいる昆虫への乱獲については警鐘を鳴らす。
「野生の生き物ですので、昆虫に限らずリスクはあると思います。昆虫に限定して言えば、加熱調理は必須ですし、生物学的にはエビやカニに近いため甲殻類アレルギーにも注意が必要です」
未来の食糧として注目を集める昆虫食だが、無秩序な乱獲が続けばその価値も失われかねない。今こそ、適切なルールや対策が求められている。