『新感染 ファイナル・エクスプレス』●監督:ヨン・サンホ/出演:コン・ユ、チョン・ユミ、マ・ドンソクほか/上映時間:1時間58分/韓国/配給:ツイン ※2017年9月1日(金)より、新宿ピカデリーほかで全国公開中 © 2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.
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 本作は、謎の感染症が蔓延し、人々を阿鼻叫喚させるという、いわゆるパンデミック映画です。と聞くとB級映画のごとく軽く思われがち。ところが、これが予想を裏切る秀逸さ昨年のカンヌ国際映画祭でも上映され、韓国でも大ヒット。筆者なんて、同じく感染者が次々と人を襲うダニー・ボイル監督&キリアン・マーフィ主演の傑作『28日後…』(2002)以来の大興奮で、鼻血が出そう。

 そこで、称賛ポイントを3つにまとめました。

(1)体験型の恐怖

 舞台となるのはソウル→釜山の高速鉄道KTX内で、約2時間の旅。上映時間1時間58分なので、観客は登場人物たちと同じように感染者が列車に乗り込んでしまってからの恐怖を味わうことになります。おまけに列車という密閉された空間で、外に逃げ出したくとも、すでに、至る街が侵されている様子。逃げ場なき状態の緊張感が半端じゃない。

(2)説得力増す感染者の動き

 コレ、この手の映画でいちばん重要。お化けでもなんでも何が怖いって、人の姿をしているのに、この世の者ではない動きをしながら迫って来られること。お漏らししちゃいそうです。本作は主演級のみならず、画面の隅々にいるエキストラであろう人々まで見事な動きを披露。この、ぬかりのなさが素晴らしい。

(3)人間が怖い 

 人間、危機に直面したときに本性が出ちゃうもの。主人公たちは愛する人を守るために奮闘するが、必ず保身に走る奴がいるのですよ。本作もしかり。感染者のみならず裏切り者との心理戦を繰り広げながら、いかに生き抜くか。見た目のおどろおどろしさだけでなく、最も怖いのは、ある瞬間に変容してしまう人間の心そのものであることを描いている人間描写が鋭い!

 というわけで、本作にハマった人は前日譚を描いたアニメ『ソウル・ステーション/パンデミック』(9月30日公開)もぜひ。

 しかし、韓国映画は力あるな。

文/中山治美(映画ジャーナリスト)