「芸能の世界では、事務所側とタレント側が、お互いに “こういうものだよな”と、慣習的に契約を結ばないままになっていることが多いです。事務所によっては同じ所属なのに、契約している人もいれば、していない人もいるなんてこともあります」(前出・芸能事務所幹部)

 契約トラブルなどから、芸能人個人の権利を守るため、今年5月に立ち上がったのが『日本エンターテイナーライツ協会』。同団体の共同代表理事で、多くの芸能トラブルを担当してきた佐藤大和弁護士は、芸能事務所の契約書の問題について次のように話す。

急増する悪徳事務所

「契約書があったとしても、顧問弁護士が作った契約書をなんとなく使っていて、渡している事務所側の人間も中身を理解していないケースも多い。だとすると、説明もきちんとできないですよね」

 なぜ、今になって契約トラブルは表面化してきたのか。

「やっぱり悪徳な事務所が多いからだと思います。契約を結んでいないことが悪いというわけではなく、慣習的に契約書がなかったとしても、待遇などきちんとしているところも多いなか、この慣習を逆手に取って、タレントが著しく不利な契約を結んでいる悪徳な事務所もある。

 問題が表面化してきたのは、昨今のネットの隆盛で、タレント個人でもSNSなどを使って声が上げられるようになったことが大きいのではないでしょうか」(前出・芸能事務所幹部)

 前出の佐藤弁護士は、悪徳な事務所の違法性について次のように話す。

「さまざまなケースがありますが、芸名を使わせないことについては独占禁止法に抵触しえますし、移籍した際に芸能活動をさせない“干す”行為は、憲法22条“職業選択の自由”に反しています。それにもかかわらず、現状は一定期間“他事務所での芸能活動を禁止します”という文面は、地方の小さい事務所も含めて、私がこれまで見てきた芸能事務所の契約書のうち、6割程度は入っていますね」

 しかし、高額なレッスン料を支払わせるなどの詐欺的な悪徳事務所は除き、事務所側が契約書を厳しくするのはしかたがない面もあるという。ローラのように横暴ともいえる契約も耳にするが……。