大杉漣さん

 突然の訃報を受けて、芸能界は悲しみに包まれている。

 21日、大杉漣さんが急死した。享年66。現在放送中のドラマに出演中であったし、決まっていた仕事も多く、その影響は計り知れない。

 70年代から80年代にかけて、一大ブームとなった和製ポルノ映画。大手の映画会社も製作に乗り出し、とりわけ“日活ロマンポルノ”は社会現象にもなった。

 ロマンポルノができる前からあった、R18の成人映画は“ピンク映画”と呼ばれていて、街はずれの小さな映画館でひっそりと上映されていた。

「それらの映画は、どちらかというと“日陰者”のような存在でしたが、そこから高橋伴明、周防正行、滝田洋二郎、井筒和幸などの名監督や、演技派と呼ばれる名優たちが数多く世に出ています。

 石橋蓮司、田山涼成、柄本明、寺田農もそうですし、亡くなった地井武男さんや阿藤快さんもそうでした」(映画ライター)

 大杉さんもそんな一人だったことはあまり知られていない。

ポルノ映画は人間の根幹ともいえる“性愛”を描いています。そこにあるむき出しの人間像を演じることで、演技力が培われ役者としての幅が広がるのだと思いますね」(前出・映画ライター)

 大杉さんが“300の顔を持つ男”と呼ばれ、社会に存在するあらゆる人間を演じることができたのは、そこで鍛えられたからだったのだろう。

 そして、彼らに共通して言えるのは、遅咲きだということ。

「大杉さんが役者として注目を浴びるようになったのは、みなさんご存知のように北野武監督の『ソナチネ』です。このとき、オーディションに遅刻したにもかかわらず、合格した話は有名です。42歳のときでした」(芸能プロ関係者)

 この作品での演技が認められ、それからの活躍は目を見張るものだった。“CM女王”じゃないけれど、テレビで大杉さんの顔を見ない日はなかったと言っても過言じゃない。また、彼は演技派の役者というだけでなく、ナレーションなど活躍の場を広げ、とりわけバラエティ―番組での評価も高かったようだ。

 バイプレイヤーは“脇役”を意味する和製英語だが、

バイには2つという意味もありますから、主役も脇役もできる実力派俳優と言っていいでしょう」(ドラマ演出家)

 大杉さんは“スター(主役)”でもあったのだ。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。