佐藤さんは知人に紹介してもらった葬儀業者と交渉し、低価格で火葬をしてもらうことに。霊安室で久しぶりに対面した父親の姿は……。

警察の霊安室で遺体となった父親と対面した

「顔はどす黒く変色して……。腐敗臭を抑えるために、顔以外は袋に覆われていました。小学生以来、一緒に写真を撮っていなかったので不謹慎とは思いましたが最後に一緒に写真を撮りました」(佐藤さん)

 安くしてもらったとはいえ、それでも火葬には約42万円の費用がかかった。搬送費や棺代、収骨容器代などだ。

「本来はもう少し安くすむらしいのですが、父の遺体は腐敗していたので、遺体を処理するスタッフに対する特別手当や、特別な安置処理だけで10万円ほど余計にかかりました」(佐藤さん)

 もし父親に貯金がなければ、これらの費用はすべて佐藤さんが負担する必要がある。

 佐藤さんは父親が亡くなった部屋の片づけに入った。清掃費を浮かせるため、自分でゴミを仕分けて運ぶ。結構な重労働だ。筆者も手伝った。

「パパを捨てていいよ」と言った子ども時代

 東京・葛飾区にある築51年の住宅団地。間取りは2DKだ。ドアを開けるとむあっとするにおいが漂ってきた。死臭ではなく50年間の生活でついたにおいだ。

 ありとあらゆるものがタバコのヤニで黄色く変色している部屋はずいぶん散らかり、埃っぽい。

 佐藤さんが子どものころに描いた絵やアルバム、七五三の衣装なども無造作に転がっている。自室には父親の趣味だった機械の製図が山のように残っていた。机の上には家族3人で写った写真が。佐藤さんは手に取って振り返る。

「父はお酒が大好きで、毎日飲んでいました。母とも毎日ケンカをしていて、暴力をふるうようにもなって……」