三橋さんを仰ぎながら歌う玉三郎。形見として誕生石の宝石をもらったという
三橋さんを仰ぎながら歌う玉三郎。形見として誕生石の宝石をもらったという
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「三橋さんのマネージャーでコンサートにも踊りで出演されている二条弘子さんは、私と片岡仁左衛門さんの踊りで一緒に踊ってらしたのね。私が16歳のときですから、50年も前のことなんだけど(笑)。でも、生まれたときから三橋さんの歌で生きてきましたし、『達者でナ』なんてとても好きだったんですね」

後輩たちに歌舞伎座を盛り上げて欲しい

 古い名曲を「将来の人たちにも歌い継いでもらいたい」と言う。先日、10月に熊本・八千代座で行われる公演の記者会見で、いまの歌舞伎界について“危機的状況”と評し、

「先輩が減ってしまったので、若い方が曲の深い意味などを理解せずに、本意が伝わらないものになるのが心配なんです。層が薄くなった時代。新しい歌舞伎座になってから特にそう思います」

 と話していた。人間国宝の目には、やはり現代の歌舞伎界は危機なのだろうか。

「そんなに危機的じゃないけど、偶然に言ったことがずいぶん大げさに出ちゃって、とても心苦しいんだけどね……(笑)。でも、歌の世界でもなかなか若い世代が増えないと思うんですね。

 歌番組だって少なくなったと思います。コンサートだってやりにくい時代でしょう。そういうことが歌舞伎にもあったので。それを言ったらやけにクローズアップされて私としては苦しいんだけど。別にそれほど大義はないんです」

 いまの歌舞伎界をただ悲観しているわけではない。

「ずいぶん新作も出てきました。やっぱりお客さまに来ていただかなければならないので、そういうことをみなさんで、私よりも後輩たちが、歌舞伎座を、盛り上げてくれることが望みですね」

 確かに市川海老蔵や中村獅童、片岡愛之助、中村勘九郎など次代のスターたちもさまざまな場で活躍している。

 しかし、自身については、

「自分はとてもじゃないけど……。いろんな意味で数年でしょうね。でも、わからない。数年って9年かもしれないし、1年かもしれない(笑)」

 御年68歳。しかしその立ち居振る舞いは凜としていて、年齢を感じさせない。その美しさを身につけるには……。

「やっぱりちゃんとした食べ物ですね。あとはちゃんと動くこと、寝ること、“自分”を知るということですね。いろいろな意味で自分に何が似合うのか知ること。自分を見つめることで変わっていきますから」

 長らく野菜中心の生活を送ってきたが、近年は“のどの潤い”のために肉も食べるようになったという。

「牛が必要なんですよね。毎朝食べてます。今日も食べてきましたよ(笑)。量は日によるけど100グラムから150グラムかな」

 いつまでも、その活躍をファンに見せてほしい。


〈INFORMATION〉
コンサート『坂東玉三郎 越路吹雪を歌う「愛の讃歌」』が開催中。
8月19日 KOTORIホール(東京都昭島市)問い合わせ:042-546-1711
11月17日 SAYAKAホール(大阪府狭山市)問い合わせ:072-365-8700
チケットは各プレイガイドで絶賛発売中