秋田県立金足農業高校の吉田輝星投手

 秋田県勢で103年ぶりとなる、甲子園準優勝を果たした県立金足農業高校野球部。そして、一人の“東北の怪物”が、甲子園の主役となった。 

 吉田輝星投手、18歳。

 彼は、侍ジャパンU-18の日本代表にも名を連ねている逸材。注目される進路は、プロか大学進学か、それとも社会人か。今後の動向に注目が集まる中、本人がつい本音をポロっとこぼしたことで、ちょっとした騒動になっているのだ。

ポロリと出た本音

「高校で準優勝報告会のあとに『好きな球団? 巨人。入りたい? 行きたいです』と将来的な希望を口にしてしまったんです。

 本人も地元の人に祝福されてテンションが上がりすぎたのかもしれませんが、これを聞いて驚いたのが金足農の中泉一豊監督(45)と、すでに大学進学の内定を出している八戸学院大の正村公弘監督(54)なんですよ」(スポーツ紙記者)

 吉田投手は高校2年生の頃からスタミナアップのために、冬場に徹底した走り込みを重ねてきた。雪の中、長靴を履いての長距離走や、室内練習場でのダッシュに取り組んだ。

 下半身を強化して太ももがたくましくなり、しゃがむたびにパンツが破ける。母親は何回パンツを買い足したか、とこぼすほどだったという。

 さらに吉田は、奥歯が欠けるほど踏ん張るため、マウスピースを着用してトレーニングを重ねている。

 年明けの合宿では、早朝5時半から8キロ走や坂道ダッシュをしたことで、球威が増して捕手・菊地亮太の左手人さし指はミット越しでも切れて出血するほど、球に重さが増していたという。

 そのミットも2か月に1度交換させていたというから驚くが、それもこれも2人の監督の指導があってこそのもの。吉田投手の八戸学院大への進学が内定したのは、そんな経緯があったからだった。

 昨年も10月からは、正村監督の指導を定期的に受けて、投手として飛躍的に成長。

「正村監督のおかげで、ここまでの逸材として開花したのは間違いないです。本人も金足農の中泉監督も、正村監督には恩義があるわけですよ。それだけに八戸学院大に進学、さらに腕を磨くのがベストだと考えていたんですが、甲子園で状況が変わってしまった。

 日本代表での活躍次第で、プロ側の高い評価によっては間違いなくプロ入りですよ。ドラフト下位の選手ならともかく、これだけ評価が上がった以上、大学が内定で一本釣りするのは不可能です。

 八戸学院大の正村監督も、そのようなプロ野球の流れを知らない人じゃありませんからね。とはいえ、諦めはつかないほど、逃すのは悔しいでしょうね」(前出・スポーツ紙記者)

 吉田投手本人の気持ちが一番大事だが、進学かプロか。ドラフトまではそう時間もないのも事実だ。

<取材・文/宮崎浩>