災害対策と同様に、テロ対策についても注目が集まる。過去には'72年ミュンヘン大会、'96年アトランタ大会で、いずれも死傷者を出すテロ事件が起きている。

日本の対策は甘すぎる?

「テロが起こる可能性は低いでしょう」と前置きしたうえで、「ハード面、ソフト面、双方から警戒を強めなければいけない」と話すのは、軍事ジャーナリストの黒井文太郎さん。

「日本の入国チェックは、指紋や顔写真による本人照合などは始まっていますが、それでも欧米諸国や中国と比べるとやさしすぎるくらいです。過剰に厳しくする必要はありませんが、世界的に標準化しつつある瞳孔を取り囲む目の模様部分をチェックする虹彩認証は日本でも導入すべきです。怪しい人物を入国時に厳しく審査するハード面の強化によって、テロの発生率を下げることができます

 会場の警備にどれだけ目を配れるかも、テロの抑止につながるという。

「各会場で警備をしっかり行うこと。日本の警察は統制が取れており非常に優秀ですが、広範囲の屋外で行われるマラソンのように、警備が難しい競技もある。実際に、2013年にはボストンマラソンで爆弾テロ事件が発生しています。目を光らせる以外の対策も必要

 世界を見渡せば依然、テロ事件が頻発し、過激派組織『イスラム国』(IS)支持者による犯行は日本でも大きく報じられている。

「日本国内におけるイスラム過激派の活動は、0%と断言できますから不安視する必要はないでしょう。むしろ、海外のテロ組織による犯行よりも、無差別殺人や通り魔などが起こる可能性について考えておくべき。

 実は海外で起こるテロの多くも、精神に異常をきたした人や人生に絶望した人による犯行が少なくない。宗教観や民族観は後づけで、きっかけは妄想や絶望によるものなのです

 どうすれば未然に防げるのか?

「警察は、薬局やホームセンターなどに対し、爆弾の原料となる薬品類を販売する場合には購入者の身元と使用目的の確認を義務づけ、怪しい人物は通報するように通達しています。

 ただし、ネット販売の場合には、なかなかそれを徹底するのが難しい。今後は新しい警備の形を検証しなければいけません。日本でどこまで必要かは議論すべきですが、例えば通信傍受は海外のテロ対策ではすでに常識。オリンピック・パラリンピックを見据えるなら、日本も警備の強化を視野に入れていかなければいけないと思います」


〈識者PRIFILE〉
黒井文太郎さん
軍事ジャーナリスト。著書に『イスラム国「世界同時テロ」』『イスラム国の正体』(いずれもKKベストセラーズ)など

和田隆昌さん
災害危機管理アドバイザー。NPO法人防災・防犯ネットワーク理事。主な著書に『まさかわが家が』(潮出版)など