そして、もうひとつ大事なのは、自分を病気前の状態に戻そうと思わないことだと、桜井さんは強調する。

休んだ分を挽回しようなんてムリ。これまで働いてきた“貯蓄”があると思って周囲に頼っていい。それでも、実際に復職してそのまま働くのが難しいと感じたら、割り切って自分自身の希望や条件を下げる。

 “できない”とか“つらい”ではなく、自分からどうしたいのか伝えることです。お互い歩み寄って着地点を探して、どうしても合わないなら、気持ちを切りかえて転職を模索するのも一手です」

サバイバーが働く職場。体調が悪いことがあっても、お互いさまという気持ちで支えあう
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 桜井さんたちが電話で受ける相談では、半分が新規就労について。希望を尋ねると、自分で条件を厳しくしていってしまう人も多いとか。

「自分の現状を客観的に見て。ひとりで考えると混乱して当たり前。まずはどこかに相談して、家庭環境や年収などの状況を踏まえ、どうした働き方がいいのかを考える。

 そして就職試験で必要なことは、病気や治療のことを話すより、自分がなぜそこに勤めたくて、何ができるのかをしっかり伝えることです

 桜井さんが現在、ともに働いているのは、ほとんどが「がんサバイバー」。それぞれが自身の体験を糧に、仕事に役立てている。

「誰かが入院したら、寝てないで病院の情報や実態を集めてきて、などと言っています。亡くなった人もいるけれど、最後まで在宅で仕事をしてくれて、誤字が多くなってもみんなが何も言わずに直していました。

 人生100年あったら、2度目のがんだってあるでしょう。私はそれを前提に一病息災にすればいいかなと思っています


桜井なおみさん ◎キャンサー・ソリューションズ代表『キャンサー・ソリューションズ』代表、元厚生労働省がん対策推進協議会委員。乳がん体験者。自らの体験をもとにがん患者の社会支援の活動を開始。社会へのがん啓発や患者・家族の生活実態調査と解決策に関わる情報発信も行う。