自殺未遂者の75%に精神障害あり

 精神疾患は自殺との関連性が高い。自殺予防総合対策センター(現在は自殺総合対策推進センターに改組)は、自死遺族の協力をもとに、自殺した人の背景を調査した「心理学的剖検」を行っている。

 自殺した人の生前の行動を調査し、精神疾患を経験しているかどうかを調べたものだ。それによると、自殺者の3〜5割はうつ病だった。年間自殺者が急増した'98 年以降、精神疾患、特に気分障害が増加したこととも重なる。

 自殺未遂者の75%に精神障害があり、うち約半数はうつ病という調査結果もある。うつ病対策は自殺対策と連動するともいわれる。

 静岡県富士市は、「お父さん、ちゃんと眠れている?」というキャッチフレーズで睡眠キャンペーンを行っている。自殺対策のなかでは「富士モデル」ともいわれ、うつ病の身体症状、特に不眠に注目した取り組み。働き盛りの中高年男性を想定し、かかりつけ医や産業医と精神科医をつなぐことが狙いだ。

「メンタルヘルスの関心の高まりとともに、治療を求める行動にも変化があったのではないでしょうか」(竹島氏、以下同)

 その背景として見逃せないのが、厚労省が'04年に提示した「精神保健医療福祉の改革ビジョン」だ。「国民意識の改革」「精神医療体系の再編」「地域生活支援体制の再編」「精神保健医療福祉施策の基盤強化」が謳われ、「入院医療中心から地域生活中心へ」という方針が示された。

 '10年の閣議決定では、社会的入院の解消に向けた検討や医師や看護師などの人員体制の充実に向けた検討がされるように。都市部での病院の病床数(受け入れる入院患者の数)は増やさず、精神科のクリニックが受け皿になってきている。

「以前、精神科のクリニックは目立たないところで開業していましたが、いまは人通りが多いところにあります。通院患者が増え、精神医療への抵抗感が薄らいできたといえます」