「首都圏に比べて地方は大丈夫ということはない。愛知県警の特殊詐欺のデータを見ると県内でさまざまな手口が地域ごとに順繰りに回っていることがわかります。この地域はこの詐欺、あの地域はこの詐欺という具合に。ATMを使った詐欺がこの地域に集中し、警備が強くなったら違う形が多くなったり。いま少なくても安心できるということはまったくありませんね」

 オレオレ詐欺被害は、ただお金を騙し取られただけではすまないケースに及ぶことも。

「家族をかたった詐欺の場合、被害者となってしまった人が、自分を責めてしまうことがあります。例えば息子さんをかたった詐欺に遭ってしまって、息子さんから“俺の声が聞き分けられないのか”“なんでこんなのに引っかかるんだ”などと被害者に追い打ちをかけるような言動があったり、それでさらに自分を責め、病んでしまったり……。

 “誰でも騙されてしまう”という前提で、“こういう電話は無視する”などと家族で話し合ったり、みんなで守り合うようになってほしいですね」(前出・山上管理官)

忘れるために、自分で笑い話に

 斎藤は事件を振り返っていま、どう感じているのか。

「騙されてお金は取られてしまいました。あの金は戻ってこないんだなと思いつつも、次男が未成年を妊娠させるようなことをしてなくてよかった、というのが素直な気持ちです。最初に電話が来たときは金銭的なことで解決できるなら、それでいいだろうと思ったのは事実です。なんで息子を疑ってしまったのか、恥じる気持ちになり、自分を責めてしまいました」

 なんとか今は舞台で共演した人たちに自虐ネタとして話せるようにはなった。ただ、早く事件のことを忘れてしまいたいという気持ちも強い。