容疑者の素顔を追い
天の教えを受けた!?

 鳥取連続不審死事件を追って、現地へ出向いた話も載っている。そこでは、へレン・ケラーが手に水をかけられ「ウォーター」と言葉を発したのと同じくらいの衝撃を受けたという。

岩井志麻子 撮影/北村史成

「死刑が確定した上田美由紀は本当におブスで、安い服を着てゴミだらけのアパートに住んでいたんですけど、勤めていたスナックはホステスの平均年齢が65歳ぐらいなんですよ。

 そこに当時35歳の美由紀がいれば、光り輝くピチピチのかわいい子。自分が1番になれる場所は絶対にあって、そこに行けばいいんだと学びましたね。

 もうひとつ、彼女に殺されかけた男性に話を聞いたんですけど、彼女はどんな男でもすごく褒めたんですね。しらじらしくても“若いとき、高倉健に似てるって言われたでしょ”とか。

 だから、美由紀が魅力的でなくても、褒めてもらえることがうれしくてみんな夢中になっちゃう。人を褒めるって大事だとつくづく思いました

 現在の週刊誌の勢力図といえば、文春と新潮、現代とポスト、アサヒ芸能と大衆が、それぞれ読者層や作り方が似ていてライバル誌と見られている印象だ。

「でも宝石は、ほかとは違う独立した唯一の存在だったんですよ。お上品ぶったり、硬派ぶったりしなくて、でも、振り切ったエロには踏み込まない」

 サラリーマンが出張のときに新幹線で必ず読み、降りるときに捨てて家に持ち帰らない存在だったとか。

そんな雑誌で興奮できたって、ええ時代だったんですよね。インターネットの発明は、簡単にスケベなものが見られる状況をはじめ、人類にとっていろいろな面を変えた本当にスゴいものだと思います。

 それにしても“週宝”について語って、まさか古きよき時代の話になるとは。自分が20代のころ、“昔はよかった”なんていう大人に絶対ならないと思っていたのに、バンバン言ってる

 若いときはオバサンになるのが本当に怖かったけど、なったらなったで楽しくてしょうがないですね(笑)。佐藤愛子さんに曾野綾子さん、寂聴先生もみんな90歳を越えてますけど、しっかりしてキレイなんですよね。やっぱりオバサンは強い生き物だから、みんなで堂々と渡り歩きましょう」

ライターは見た!著者の素顔

 取材の日も服はもちろん、バッグ、ブーツもヒョウ柄だった志麻子先生。「ヒョウになる作家は私ひとり。業界の“週宝”なんですよ」と話しつつ、黙っていてもヒョウ柄のものが贈り物で集まってくるとうれしそう。

 ヒョウといっても怖さはみじんも感じさせず、撮影の際にはこちらの勝手なリクエストに照れ隠しの笑顔で応えてくださいました。

『シマコの週刊!?宝石』
岩井志麻子=著
光文社 740円(税抜)
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PROFILE●いわい・しまこ●1964年、岡山県生まれ。少女小説家としてデビュー後、『ぼっけえ、きょうてえ』で’99年に日本ホラー小説大賞、翌年には山本周五郎賞を受賞。2002年『チャイ・コイ』で婦人公論文芸賞、『自由戀愛』で島清恋愛文学賞を受賞。著書に『現代百物語』シリーズなど。

(取材・文/熊谷あづさ)