悠然とそびえる岩手山、その麓に広がる田んぼや畑など、まるで絵画のような美しい風景を眺めながら、両親の建てた家に一人で暮らす末盛千枝子さん。「84歳になって、こんな日々が訪れるとは不思議なこと」と語るが、“こんな日々”とは、どんなものなのだろうか。
免許を返納したら用事はまとめてこなすように
「新聞を読んだり、テレビを見たり、けっこうのんびりしています。外に新聞を取りに行っても景色がきれい。
友達もよく来てくれます。つい先日も、この家を建築設計してくださったご夫妻が訪ねてくださってね。いい家をつくってくださったのに、こんなに散らかして申し訳ないと思ったけれど、今さら慌てて片づけられないのでそのまま見ていただきましたが、『楽しそうに住んでくださってうれしい』と言っていただけて、ほっとしました」
天井まで届く大きな窓に堂々とした梁、美しい芸術作品に囲まれたリビングには、今も昔も多くの人が集まる。東日本大震災で発足した絵本プロジェクトのメンバーや、NHK文化センターの関係者、何十人という人が集ったこともあるそうだ。日々、楽しく暮らす末盛さんだが昨年は、ちょっとした変化があったとか。
「車の免許を返納したんです。そうすると周りの景色がいいのはいいけれど、ちょっとその辺に行くのも大変。なるべく用事はまとめて済ませるようにしています。今回、本の出版の話をいただいて、またいろいろなことを考えたり、思い出したりして。やはり私は、本の仕事が好きなんだなと思いました」
今回の著書の中で、末盛さんが特に気に入っているというのは、2つの結婚指輪の話。
「私は2回の結婚で(最初の夫はNHKプロデューサーの末盛憲彦氏、2人目の夫は元神父・神田外語大学名誉教授の古田暁氏)、2つの指輪を持っていて、落ち着かない気持ちがずっとあったんです。
あるとき、ふと思い立って指輪を出してきてはめたら、2つあるのが当たり前のような気がしてね。どちらが好きと決められなかったのですが、心のバランスがとれた気がしました」
















